- 松本 聖生 (まつもと・はるき)
- 医学部 リウマチ膠原病内科学講座 専攻医
- 研究グループ
- 福島県立医科大学 医学部 リウマチ膠原病内科学講座
松本聖生, 藤田雄也, 松岡直紀, 天目純平, 古谷(屋代)牧子, 浅野智之, 佐藤秀三, 鈴木英二, 渡辺浩志, 右田清志
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 先進予防医学共同専攻 リウマチ・膠原病内科学分野
辻創介, 福井翔一, 梅田雅孝, 岩本直樹, 川上純
概要
論文掲載雑誌:「Arthritis Research & Therapy」(令和3年5月)
免疫チェックポイント分子は自己免疫性疾患, 悪性腫瘍の病態に関与します. IgG4関連疾患(IgG4-RD)の発症メカニズムは様々な機序が推測されていますが, PD-L1阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)としてIgG4-RDが発症したという報告もあり, IgG4-RDの病態に免疫チェックポイント分子が関与していると推測されます. T cell immunoglobulin and mucin domain-3(TIM-3)は免疫細胞の表面に発現する免疫チェックポイント分子の1つであり, Galectin-9(Gal-9)を介することで免疫抑制の一助を担います. 本研究では, Gal-9/TIM-3 pathwayとIgG4-RDの病態との関連性を検討しました.
未治療のIgG4-RD患者59名と比較対象として未治療の関節リウマチ (RA)患者13名および健常人37名の血清を収集し, ELISA法で可溶性TIM-3 (sTIM-3)とGal-9を測定し, 血清学的バイオマーカーとの相関を検討しました. 内臓病変(肺, 膵臓, 胆管, 腎臓, 後腹膜線維症, 大動脈, 前立腺)の有無でsTIM-3を比較し, 臓器ごとの関与について多変量ロジスティック回帰分析を行いました. また, IgG4-RD患者7症例でステロイド治療前後のGal-9, sTIM-3, 血清IgG4値, IgG4-RD responder index (RI)を測定し, その推移を確認しました.
IgG4-RD患者では健常者と比較して, Gal-9 とsTIM-3が有意に上昇していました. Gal-9, sTIM-3はBAFF, 可溶性IL-2受容体, IgGと正の相関を示しましたが, IgG4とは相関を示しませんでした. sTIM-3は内臓病変を有する群で有さない群と比較して有意に上昇していました. 多重ロジスティック解析では胆管(OR: 12.29, 95% confidence interval [95%CI], 1.83-109, p = 0.004), 腎臓(OR: 18.59, 95%CI 2.4-143, p = 0.022), 後腹膜線維症(OR: 13.14, 95%CI 2.3-75.2, p = 0.027)の3病変が独立してsTIM-3高値と関連していました. 治療前後でGal-9の低下を認めたが, sTIM-3についてはこの傾向はみられませんでした.
今回の研究では, IgG4-RDで血清Gal-9, sTIM-3が上昇していました. sTIM-3においては内蔵病変を有するIgG4-RDで有意に上昇しており, sTIM-3がIgG4-RDのphenotypeを推測するバイオマーカーになりうることが示唆されました.
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 リウマチ膠原病内科学講座
電話:大学代表024-547-1111(代)または 医局 024-547-1171
FAX:024-547-1172
講座ホームページ: http://www.intmed2.fmu.ac.jp/rheumatology/index.html
メールアドレス:haruki91@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)