- 趙 景敏 (ちょう・けいびん)
- 医学部 放射線医学講座 大学院研究生(日中笹川医学奨学金制度第42期研究者)
- 研究グループ
- 趙 景敏、伊藤 浩(受入れ指導教官):放射線医学講座
譚 成博、右近 直之、下山 彩希、髙橋 和弘、趙 松吉(責任著者):先端臨床研究センター
前島 裕子、下村 健寿(最終著者):病態制御薬理医学講座
今井 亮太、大宮 雄司:株式会社ツムラ
南 光賢:吉林大学
概要
論文掲載雑誌:「Scientific Reports」(01 Apr 2021;11:7421)
加齢に伴う臓器の機能的変化を随時予測・把握することは、高齢化社会における健康的な生活を維持する上で重要である。また生体内の糖代謝は、臓器機能の変化を評価する潜在的な指標の1つである。 したがって、生体における臓器の糖代謝に関する情報の取得は、臓器の機能的変化を理解するのに役立つと考えられる。 またグルコース類似体である[18F]-フルオロ-2-デオキシ-2-D-グルコース(18F-FDG)は、糖代謝の生物学的指標として、基礎医学研究、創薬や臨床診療などのさまざまな分野で広く利用されている。 しかし、超高齢動物における臓器の糖代謝の変化についてはまだ完全には解明されていない。 そこで本研究では、超高齢マウス(96週齢、ヒトの約70歳相当)の各臓器・組織及び局所脳組織における糖代謝の変化を18F-FDGの取り込みと18F-FDGオートラジオグラフィーの手法を用いて測定し、若齢正常マウス(9週齢、ヒトの約20歳相当)の場合と比較検討を行った。さらに加齢に伴う各臓器・組織及び局所脳組織への18F-FDG取り込みの潜在力を測定するためインシュリン負荷を実施し、非インシュリン負荷群と比較した。その結果、非インシュリン負荷群では、若齢正常マウスに比し超高齢マウスにおける血液、血漿、筋肉、肺、脾臓、膵臓、精巣、胃、小腸、腎臓、肝臓、脳及び局所脳組織(皮質、線条体、視床と海馬)への18F-FDG取り込みは有意に高くなった。一方、超高齢マウスにおける膵臓と腎臓、また脳の局所領域の皮質、線条体、視床と海馬への18F-FDG取り込みはインシュリン負荷によって低下したのに対し、若齢マウスでは増加した。以上の結果から、超高齢マウスにおいて、一部の臓器・組織への18F-FDG取り込みはインシュリン負荷によって低下し、加齢はインシュリン抵抗性を増加させ、全身及び脳局所の糖代謝の機能低下に伴う加齢関連の疾患を引き起こすことが示唆された。
この研究の結果は、加齢による糖代謝の機能低下に伴う加齢関連疾患の予防及び治療戦略の開発につながる成果である。
本研究は、病態制御薬理医学・先端臨床研究センターと株式会社ツムラが共同で実施したものである。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 先端臨床研究センター
電話:大学代表024-547-1111(代)、024-581-5166
FAX:024-581-5170
メールアドレス:zhao-s@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)