福島県立医科大学 研究成果情報

スイス雑誌「Frontiers in Nutrition, section Nutrition and Brain Health」掲載(12 May 2021;8:657663)(2021-06-09)

Evaluation of effect of Ninjin'yoeito on regional brain glucose metabolism by 18F-FDG autoradiography with insulin loading in aged mice

高齢マウスの局所脳糖代謝に対する人参栄養湯の効果:インシュリン負荷による18F-FDG オートラジオグラフィーの画像手法を用いた評価

趙 景敏 (ちょう・けいびん)
医学部 放射線医学講座 大学院研究生(日中笹川医学奨学金制度第42期研究者)
        
研究グループ
趙 景敏、伊藤 浩(受入れ指導教官)・放射線医学講座
右近 直之、下山 彩希、譚 成博、髙橋 和弘、趙 松吉(責任著者)・先端臨床研究センター
前島 裕子、下村 健寿(最終著者)・病態制御薬理医学講座
今井 亮太、大宮 雄司・株式会社ツムラ
南 光賢・吉林大学

概要

論文掲載雑誌:「Frontiers in Nutrition, section Nutrition and Brain Health」(12 May 2021;8:657663)


近年の臨床研究では、人参栄養湯(NYT)は認知機能を改善する可能性があることが明らかになりました。しかし、NYTが高齢患者におけるその効果を発揮するメカニズムは不明であります。そこで本研究では、老齢化した野生型高齢マウスにおける局所脳組織の糖代謝に及ぼすNYTの効果について、インシュリン負荷による18F-FDGのオートラジオグラフィー(ARG)の画像手法を用いて比較評価を行いました。

84週齢の雄性マウス(C57BL/6J)をNYT治療群と非治療群に分けました。NYT治療群のマウスはNYT混餌で、無治療群のマウスは普通餌で各々12週間飼育しました。マウスが96週齢になった時点で、インシュリンの感受性を評価するため、NYT混餌群と普通餌群のマウスをさらにインシュリン負荷群と生理食塩水投与群に分けしました。インシュリン負荷群のマウスには単位体重(kg)当たりにインシュリン2単位を、無治療群のマウスには生理食塩水を、18F-FDGの投与30分前にマウスの腹腔内に投与しました。18F-FDG 投与90分後、イソフルラン麻酔下で心臓より全採血し、大脳を摘出しました。摘出したマウス脳を脳スライサーに入れて、嗅球側から小脳側に向けて2㎜間隔で大脳の横断面スライスを作成し、イメージングプレートに露光させ、18F-FDG ARG画像を得ました。18F-FDG ARG画像上で大脳皮質、線条体、視床及び海馬の局所に関心領域を置き、18F-FDG ARG画像の定量解析を行いました。その結果、無治療群のマウスではインシュリン負荷により大脳皮質、線条体、視床及び海馬領域への18F-FDGの取り込みは負の変化を示したのに対し、NYT治療群のマウスでは正の変化を示しました。以上の結果から人参栄養湯は高齢マウスの局所脳組織のインシュリン耐性を軽減することで、加齢による脳疾患の予防が可能であることが示唆されました。

本論文は、本学病態制御薬理医学講座、先端臨床研究センターと株式会社ツムラの共同研究の成果です。


連絡先

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