福島県立医科大学 研究成果情報

英国雑誌「International Journal of Neuropsychopharmacology」掲載( 2020年11月5日published online)(2021-03-01)

Antidepressive Effect of Antipsychotics in the Treatment of Schizophrenia: Meta-Regression Analysis of Randomized Placebo-Controlled Trials

統合失調症患者を対象とした抗精神病薬の抗うつ作用の検討:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタ解析

三浦 至 (みうら・いたる)
医学部 神経精神医学講座 准教授
        
研究グループ
三浦至1,野坂忠史2,矢部博興1,萩勝彦2
1 福島県立医科大学医学部 神経精神医学講座
2 大日本住友製薬(株)メディカルアフェアーズ

概要

論文掲載雑誌:「International Journal of Neuropsychopharmacology」(2020年11月5日)


統合失調症患者に対する抗精神病薬の臨床試験(35試験、13,890例)を対象に、抗精神病薬の抑うつ症状に対する改善効果と各精神症状の改善効果との相関性、および各抗精神病薬の抗うつ効果を系統的レビューおよびメタ解析により検討した。

抑うつ症状の改善と有意な相関が認められたのは全般的精神症状(β=0.618)、陽性症状(β=0.476)、陰性症状(β=0.689)、および総合精神病理症状(β=0.603)であり、陰性症状との相関が最も高いことが明らかとなった。

ジプラシドン以外の第二世代抗精神病薬では、いずれもsmall~mediumレベルの効果量でプラセボと比べ有意に高い抗うつ効果が認められた。

これらの結果から、抑うつ症状の改善には、ある程度他の症状ドメインの改善、特に陰性症状の改善と連動している可能性が示唆された。

統合失調症患者における抑うつ症状は、長年にわたり第二世代抗精神病薬が広く用いられているにも拘らず実臨床において依然として頻繁に認められている。このことを考慮に入れると、今回認められた効果は、抗精神病薬の真の抗うつ効果を過大評価している可能性が考えられた。

本研究は統合失調症治療における抗精神病薬の抗うつ効果について包括的に調べた初の大規模メタ解析であり、今回の研究成果から第二世代抗精神病薬の殆どが統合失調症患者の抑うつ症状に対して改善効果を持つことを見出した点において勇気づけられる結果であった。また今回の結果を確認するためには、抑うつ症状の改善を主要評価項目とした十分なサンプルサイズをもつ並行群間比較RCTが更に必要であると考えられた。


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