福島県立医科大学 研究成果情報

英国雑誌「Scientific Reports」(令和2年12月17日オンライン)(2021-01-25)

Targeting oxytocin receptor (Oxtr)-expressing neurons in the lateral septum to restore social novelty in autism spectrum disorder mouse models

外側中隔のオキシトシン受容体発現ニューロンは自閉症スペクトラムモデルマウスの社会新規性を改善する

西森 克彦 (にしもり・かつひこ)
医学部 肥満・体内炎症解析研究講座 特任教授
        
研究グループ
大塚彩乃 研究員、西森克彦 特任教授、前島裕子 特任教授・
福島県立医科大学・肥満・体内炎症解析研究講座

下村健寿 教授、日出間志寿 助教・
福島県立医科大学・病態制御薬理医学講座
他10名

概要

論文掲載雑誌:「Scientific Reports」(令和2年12月17日オンライン)


 自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)は近年人口70に1人以上の比率で発症するとされ、特徴的な幾つかの中核症状(異常行動)を共通点とする脳機能障害であるが、発症メカニズムは不明、有効な治療薬や治療法も確立していない。近年、脳内ペプチドホルモンのオキシトシン(OXT)をASD患者へ経鼻腔投与することで中核症状への治療効果が示され、注目を浴びている。本研究は、その治療メカニズム解明を目指して行われた。

 脳領域の外側中隔にはOXT受容体を発現するニューロンが多数分布するが、ニューロン活動を外部から自由に制御できるDREADDsシステムを用い、ASDモデルマウス外側中核のOXT受容体発現性ニューロンの特異的活性化を図った。この結果、異なる病因性のASDモデルマウスで、ASD様症状の一つの社会記憶異常が共に改善した。外側中隔に分布するOXT受容体発現ニューロンの90%以上は抑制性のGABA作動性だが、さらに、そのうち海馬CA1領域へ投射する回路が社会記憶形成時に特異的に活性化することを見いだした。このことは、OXTが外側中隔のGABA抑制性ニューロンを活性化し、投射先の海馬CA1に分布する特定ニューロンの興奮を抑制する仕組みが社会記憶形成と、自閉症症状の改善に寄与している可能性を初めて示したものであり、ASD治療の新たな脳内標的機構を見出したと考えている。


連絡先

 公立大学法人福島県立医科大学 肥満・体内炎症講座

 担当者名 西森 克彦

 電話:024-547-1751

 Fax: 024-548-0575

 E-mail:knishimo@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)