- 近藤 悠斗 (こんどう・ゆうと)
- 先端臨床研究センター 助教
- 研究グループ
- Yuto Kondo, Hiroyuki Kimura, Mamiko Tanaka, Yasunao Hattori, Hidekazu Kawashima, Kazuhiro Takahashi, and Hiroyuki Yasui
概要
論文掲載雑誌:「Chemistry: A European Journal」(October 1, 2024
銅触媒を用いた脱ホウ素ヨウ素化反応は,銅の触媒作用を用いてアリールボロン前駆体及びヨウ化物からヨウ素化アリールを合成する反応です。本反応は,次世代型の放射性ヨウ素標識法としても注目されており,放射性医薬品の開発に大きく貢献しています。しかしながら,本反応は放射性標識反応として高いパフォーマンスを発揮する一方,一般的な有機合成反応へ適用した場合に予期せぬ収率の低下が生じることがあります。この現象の発生機構については,これまで明らかにされていませんでした。そこで,本研究では,銅触媒脱ホウ素ヨウ化反応の放射化学及び一般的な有機化学におけるふるまい(反応機構及び副反応など)の違いについて詳細に調査を行いました。
研究の結果,ヨウ化ナトリウム(NaI) の銅 (Cu) に対する比率,ならびに反応溶液中のNaI及びCuの濃度が,反応を効率的に進行させる上で重要なパラメータであることが明らかとなり,特に,Cu濃度に対してNaI濃度が極めて低い条件において効率的に進行することが証明されました(詳細なメカニズムについては原著論文を参照ください)。放射性ヨウ素化反応では,前駆体や触媒に対して微量のNaIを利用することが一般的であり,放射化学におけるユニークな反応条件が,本反応の効率化に必要な要件を偶然にも満たしていたことが示されました。
本研究で得られた知見は,銅触媒を用いた脱ホウ素アスタチン化反応に対しても有用であり,当施設で進行中のアスタチン-211標識に関連する研究の発展にも寄与することが期待されます。(近藤悠斗)
図:本研究の概要
連絡先
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