福島県立医科大学 研究成果情報

第5回日本肺高血圧・肺循環学会学術集会 Young Investigator’s Award(YIA)優秀賞(2020年9月受賞)(2020-12-01)

Clonal hematopoiesis with JAK2V617F promotes pulmonary hypertension through ALK1

JAK2V617F変異クローン性造血はALK1を介して肺高血圧症を増悪させる

君島 勇輔 (きみしま・ゆうすけ)
医学部 循環器内科学講座 助手
        
研究グループ
君島勇輔、三阪智史、横川哲朗、和田健斗、杉本浩一、皆川敬冶、中里和彦、池田和彦、竹石恭知

今回の受賞について

第5回日本肺高血圧・肺循環学会学術集会


「日本肺高血圧・肺循環学会」は、病気の啓蒙、肺高血圧症の病態解明、診断と治療成績の向上、および治療指針の確立をはかり、これを通じて本症の予後の改善・疾患克服と政策構築に貢献することを目的としている。学術集会は、年1回開催されている。

賞について


40歳未満の日本肺高血圧・肺循環学会の会員を対象に、YIA選考委員会により選出される。学術集会へのYIA応募演題の中から、演題抄録を対象とした一次審査と講演による最終審査により選考される。

 

概要

 近年、血液学的には正常でも、体細胞遺伝子変異を有する血液細胞が末梢血液中に出現するクローン性造血の存在が明らかになり、その臨床的意義が注目されている。JAK2V617F変異はクローン性造血で認める遺伝子変異の一つであるが、我々はJAK2V617Fトランスジェニックマウスをドナーとする骨髄移植により、クローン性造血のマウスモデルを作成した。JAK2V617F骨髄移植レシピエントマウスは、持続的低酸素誘導性肺高血圧症モデルにおいて、野生型レシピエントと比較して、右室圧、右室重量の有意な増加と、末梢肺動脈の中膜肥厚と筋性化の増悪を認めた。JAK2V617Fレシピエントは、肺動脈周囲の著明な好中球浸潤を認め、好中球エラスターゼ活性と好中球関連ケモカインが有意に増加していた。RNAシークエンスによる解析では、JAK2V617Fは造血幹細胞、骨髄性細胞、末梢血好中球、肺好中球に分化するに従って、ACVRL1(ALK1)発現を進行性に増加させていた。ルシフェラーゼアッセイにより、JAK2V617Fは、STAT3リン酸化を介して、ACVRL1プロモーター領域でその転写を促進していた。ALK1阻害薬により、JAK2V617Fマウスで認めた肺高血圧症の増悪は完全に抑制された。さらに臨床検体を用いたJAK2V617Fアレル特異的PCR法では、JAK2V617Fクローン性造血を有する頻度は健常人より肺高血圧症患者で有意に多かった。JAK2V617Fクローン性造血は、ALK1を介して肺動脈リモデリングと肺高血圧症を増悪させることが示唆された。


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