- 名取 穣 (なとり・ゆたか)
- 医学部 腫瘍内科学講座 病院助手
- 研究グループ
- 福島県立医科大学 腫瘍内科学講座:名取穣 佐々木栄作 阿左見祐介 徳田恵美 佐治重衡 福島県立医科大学 産科・婦人科学講座:添田周 古川茂宜 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構:神林崇
概要
論文掲載雑誌:「Journal for ImmunoTherapy of Cancer」(2020;8:e001164)
本論文の内容は、本学腫瘍内科学講座、産科・婦人科学講座、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の協働によって得られた新知見となります。
がん治療の分野では免疫チェックポイント阻害薬の癌治療の有効性が注目されています。一方で、免疫チェックポイント阻害薬は免疫関連有害事象(irAE)という自己免疫疾患に似た副作用を起こします.自己免疫疾患は特定のヒト白血球抗原(HLA)遺伝子型を持つ人に発症しやすいことが知られています。
本論文では、免疫チェックポイント阻害薬を使用した2週間後に日中の傾眠と脱力を生じた患者さんのHLA遺伝子型を調べました。その結果、DQB1*06:02、DRB1*15:01、DQA1*01:02、DRB5*01:01:01という、ナルコレプシーを発症した人が100%持っているHLA遺伝子型を持っていたことが分かりました。ナルコレプシーは制御できないほどの強い眠気と、突然の一時的な筋力低下を起こす疾患です。この患者さんは睡眠障害国際分類3(ICSD-3)によりナルコレプシーと診断されました。
本論文は、免疫関連有害事象(irAE)のナルコレプシー症例を紹介した世界で初めての報告となります.遺伝的な発症素因を持つ癌患者さんに対して、免疫チェックポイント阻害薬がirAEのナルコレプシーを引き起こす可能性があります。加えて、ナルコレプシーは自己免疫疾患として確立していないため、本報告はナルコレプシーの自己免疫疾患仮説を支持する有力な証拠になり得ます。
連絡先
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