福島県立医科大学 研究成果情報

米国雑誌「Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology」掲載(2020年10月)(2020-11-10)

Characteristics of Esophageal Injury in Ablation of Atrial Fibrillation using a High-Power Short-Duration Setting

心房細動に対する高出力・短時間焼灼による食道熱傷害の特徴

金城 貴士 (かねしろ・たかし)
医学部 循環器内科学講座・心臓調律制御医学講座 准教授
        
研究グループ
金城 貴士1,2、上岡 正志1、肱岡 奈保子1、山田 慎哉1、横川 哲郎1、三阪 智史1、引地 拓人3、義久 精臣1,4、竹石 恭知1,2,4
1循環器内科学講座、2心臓調律制御医学講座、3内視鏡診療部、4心臓先進治療学講座

概要

論文掲載雑誌:「Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology」(2020年10月)


 心房細動に対するカテーテルアブレーションにおいて、高出力・短時間焼灼法が導入されている。従来の低出力・長時間焼灼に比較し、焼灼時間の短縮により伝導熱傷害を低減し、周辺臓器傷害を回避しうることが示されている。しかし、実臨床での高出力・短時間焼灼による食道への熱傷害(ETI:食道粘膜障害および食道神経叢傷害による胃蠕動運動低下)の特徴は明らかではない。

 心房細動に対して、低出力・長時間焼灼(Conventional群)でカテーテルアブレーションを施行した170例、および高出力・短時間焼灼(HP-SD群)で施行した101例を対象に、ETIの発生頻度と特徴を比較検討した。

 全例で術2日後に上部消化管内視鏡を施行した結果、75例(28%)でETIを認めた。Conventional群ではETI出現頻度38例(22%)に対し、HP-SD群では37例(37%)と有意に高かった(P=0.011)。食道粘膜傷害はConventional群とHP-SD群では差はなかったが(8% vs. 7%, P=0.827)、HP-SD群では浅いびらんにとどまる一方、Conventional群ではより傷害の強い潰瘍性病変を呈した。食道神経叢傷害からの胃蠕動運動低下はHP-SD群で有意に高かった(16% vs. 33%, P=0.002)。このことから、HP-SD群でのETI増加は、食道浅層への熱傷害による胃蠕動運動低下の増加にとどまることが示された。

 高出力・短時間焼灼により食道への熱傷害は増加傾向を示すものの、食道粘膜層に達する深い熱傷害は低減させうることが示された。


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