収縮性および拡張性心不全における心肺運動負荷試験の予後予測指標の違いに関する検討

概要

論文掲載雑誌：「European Journal of Preventive Cardiology」

近年、心不全は、左室駆出率（left ventricular ejection fraction; LVEF）の低下した心不全（heart failure with reduced ejection fraction; HFrEF）、LVEFの保たれた心不全（HF with preserved EF; HFpEF）、さらにLVEFが 40～49％と中等度に低下したHF with mid-range EF（HFmrEF）に分類され、各病態が異なることが報告されている。しかし、心肺運動負荷試験（CPX）における各病態の意義は十分に検討されていない。我々は当院でCPXを施行した慢性心不全患者1190名について各群における予後予測因子の違いについて比較検討した。HFrEF群41.9%、HFpEF群36.8%、HFmrEF群は21.3%であった。HFrEF群では他群と比して、心イベント、心血管死、全死亡が高率であった。HFrEF群では最高酸素摂取量（PVO2）、oxygen uptake efficiency slope（OUES） が独立した心イベント、心血管死の予測因子であった。HFpEF群ではPVO2が心イベント、PVO2および運動時周期性呼吸の存在が心血管死、全死亡の予測因子であった。HFmrEF群では心イベントに関する予測因子はPVO2とOUESであり、心血管死、全死亡に関する予測因子はPVO2であった。各群におけるCPXによる予後予測因子は異なり、HFmrEFはHFrEFとHFpEFの中間的な位置づけにあたり、病態を理解するのに重要な知見であると考えられる。