福島県立医科大学 研究成果情報

第77回日本公衆衛生学会総会 最優秀ポスター賞(平成30年10月受賞)(2018-12-05)

東日本大震災後の避難先の違いが5年後の精神健康度に与える影響:福島県県民健康調査

針金 まゆみ (はりがね・まゆみ)
ふくしま国際医療科学センター 放射線医学県民健康管理センター 講師
        
研究グループ
針金まゆみ、前田正治、村上道夫、竹林由武、水木理恵、及川祐一、後藤紗織、桃井真帆、中島聡美、中野裕紀、鈴木友理子、大平哲也、矢部博興、安村誠司、神谷研二

今回の受賞について

第77回日本公衆衛生学会総会


 日本公衆衛生学会(Japanese Society of Public Health)は、1947年(昭和22年)に設立された学会であり、会員数8,000人を超える日本における公衆衛生の主要学会の一つです。第77回日本公衆衛生学会総会は、福島県郡山市で、「ゆりかごから看取りまでの公衆衛生~災害対応から考える健康支援~」というメインテーマで開催されました。

賞について


 会員歴15年以内の一般演題の発表者を対象とし、抄録の審査の結果、ポスター賞が選出され、ポスター原稿の審査の結果、優秀ポスター賞及び最優秀ポスター賞が選出されました。

概要

 東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所事故により、一部の住民は避難を余儀なくされました。避難元との環境の違いが小さいほど、避難先での生活に適応しやすくなり、精神健康度は良好になると予測されました。そこで私たちは、震災から1年後と5年後の住所が、福島県内か県外かによる精神健康度への影響を検討することで、災害後の避難先と支援について吟味することを目的としました。

 国が指定する避難指示区域等に震災時に居住していた住民を対象とした「県民健康調査」の詳細調査である「こころの健康度・生活習慣に関する調査」において、2時点で回答の得られた16歳以上の26,607人を解析対象としました。震災から1年後と5年後の住所と精神健康度の関連をロジスティック回帰分析で検証しました。その結果、震災から1年後と5年後の住所がどちらも県内の方と比較して、どちらも県外の方は、5年後の精神健康度が相対的に重篤ではないオッズ比が有意に低いという結果になりました。

 この結果から、県内に居住している方が県外に居住しているよりも精神健康度が相対的に重篤ではなく、このことは、避難元の環境との違いが小さいほど、精神健康度を良好に保つ可能性を示唆していると考えられます。

 震災に伴う原子力発電所事故により避難を余儀なくされた住民において、県内に居住している人の精神健康度の方が継続して県外に居住しているよりも相対的に重篤ではなく、このことは避難先での生活に適応しやすい可能性を示唆しています。今後、継続して県外に居住している人の精神健康度に影響を与える要因を探ることで、避難元とは異なる都道府県に避難している住民に対して、避難先での生活の適応を支援する方策を探る必要性があると考えられます。

 


関連サイト

連絡先

 公立大学法人福島県立医科大学

 ふくしま国際医療科学センター 放射線医学県民健康管理センター
 電話:024-549-5130

 講座ホームページ:http://fukushima-mimamori.jp/

 メールアドレス:kenkan@fmu.ac.jp (スパムメール防止のため、一部全角表記しています)