福島県立医科大学 研究成果情報

米国雑誌「Geriatrics & Gerontology International」掲載(2018年10月号)(2018-11-19)

Clinical features and outcomes in patients with elderly-onset anti-neutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis

高齢発症ANCA関連血管炎における臨床的特徴と予後

佐藤 秀三 (さとう・しゅうぞう)
医学部 リウマチ膠原病内科学講座 講師
        
研究グループ
福島県立医科大学医学部 リウマチ膠原病内科学講座
佐藤 秀三、屋代 牧子、松岡 直紀、浅野 智之、小林 浩子、渡辺 浩志、右田 清志

概要

論文掲載雑誌:「Geriatrics & Gerontology International」(2018年10月号)


抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)関連血管炎は、原因不明の自己免疫疾患で全身の小血管に炎症(血管炎)を起こします。比較的高齢者(50-70歳)に多くみられる疾患で、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽種症(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の3つに分類されます。高齢発症のANCA関連血管炎(AAV)の臨床的特徴については海外では少数報告がありますが、本邦において、特に75歳以上の高齢発症AAVの臨床的特徴についてはまだよく知られていませんでした。今回、我々は日本人における75歳以上の高齢発症AAVの臨床的特徴を明らかにするため、以下の検討を行いました。2004年から2016年にかけて当科へ紹介、受診された初発ANCA関連血管炎患者、計36例を対象としました(MPA 20例、GPA 11例、EGPA 3例、及び分類不能 2例)。75歳以上で発症した高齢群(10例)と75歳未満発症の若年群(26例)の2群に分類し、其々の臨床的特徴と予後を比較検討しました。その結果、全体的には臨床的特徴の大きな違いはないものの、高齢群は若年群に比較し有意に女性の割合が多く、腎病変の頻度が高く、血清フェリチン値が低いことが分かりました。カプランマイヤー曲線による解析では、1年生存率が高齢群において有意に低いことが分かりました(高齢群58% vs 若年群96%, p<0.01)。特に、高齢発症MPA患者において高い死亡率が認められました。また、AAV患者において免疫抑制剤使用群と未使用群(ステロイド療法のみ)で比較すると、免疫抑制剤未使用群で有意に1年生存率が低いことが分かりました。高齢群でもステロイド療法のみの患者さんでは生存率が低い傾向でした。主な死亡原因は原疾患(血管炎)の増悪か、感染症でした。以上より、高齢発症AAV患者の臨床的特徴については特に腎病変に注意が必要であること、AAV治療においては、高齢であったとしても免疫抑制剤の使用を積極的に考慮していく必要があることが分かりました。治療経過や合併症等も慎重にモニタリングしていくことが重要と考えられます。

 

(佐藤 秀三)


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