福島県立医科大学 研究成果情報

The 27th International Complement Society meeting Travel Award(平成30年9月受賞)(2018-11-08)

MASP-1 and MASP-3 play independent roles in activation of the complement pathways

MASP-1、MASP-3は補体活性化に独立して寄与する

林 学 (はやし・まなぶ)
医学部 免疫学講座 大学院生
        
研究グループ
林 学1)2)、石田 由美1)、町田 豪1)、尾形 裕介1)、大森 智子1)、髙住 美香1)2)、遠藤 雄一1)、関亦 正幸3)、伊川 正人4)、大平 弘正2)、藤田 禎三5)、関根 英治1)
1) 福島県立医科大学 免疫学講座
2) 福島県立医科大学 消化器内科学講座
3) 福島県立医科大学 附属放射性同位元素研究施設
4) 大阪大学・遺伝情報実験センター 遺伝子機能解析分野
5) 福島県立総合衛生学院

今回の受賞について

International Complement Society meeting


自然免疫因子である補体を対象とした研究の推進と発展を目的とした学術集会であり、世界の研究者、臨床医師が参加して最新の補体研究について発表が行われます。


賞について


若手の研究者を対象として優秀な演題に対して与えられる賞です。

概要

 補体は30以上の成分からなる自然免疫因子であり、その活性化により病原体やアポトーシス細胞の排除などを行なっています。その活性化は古典経路、レクチン経路、第二経路の3つの経路から始まります。近年、レクチン経路と第二経路が様々な慢性、急性疾患、そして悪性腫瘍の病態と関連することが明らかになっており、その活性化機構の解明が求められています。mannose-binding lectin–associated serine protease(MASP)-1とMASP-3は同じMasp-1遺伝子から発現するスプライシングバリアントであり、それぞれレクチン経路と第二経路の活性化へ重要な役割を果たすことが報告されておりましたが、in vivoにおけるその役割は明らかではありませんでした。

 今回の研究では、CRISPR/Cas9システムを用いてMASP-1単独欠損マウス、そしてMASP-3単独欠損マウスを作成し、それぞれのレクチン経路と第二経路の活性化能を解析しました。その結果、MASP-1欠損マウスではレクチン経路が欠損していましたが第二経路は保持されており、MASP-3欠損マウスでは第二経路が欠損していましたがレクチン経路が保持されていることが明らかとなりました。このことからMASP-1はレクチン経路に、そしてMASP-3は第二経路へ独立した役割を果たしていることを報告しました。今回報告した補体活性化経路の解明は、病態における各経路の及ぼす影響の理解や新たな治療薬の創出へ役立つと考えられます。

 


連絡先

 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 免疫学講座
 電話:024-547-1148

 FAX:024-548-6760

 メールアドレス: immunol(at)fmu.ac.jp
 ※メール送信時には(at)を@に変えて送信してください