福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Scientific Reports」掲載(平成30年9月)(2018-11-09)

Low fasting plasma glucose level as a predictor of new-onset diabetes mellitus on a large cohort from a Japanese general population.

空腹時低血糖は糖尿病発症の予測因子である:日本人大規模コホートの解析

尾形 絵美 (おがた・えみ)
医学部 糖尿病内分泌代謝内科学講座 助教
        
研究グループ
Ogata E, Asahi K, Yamaguchi S, Iseki K, Satoh H, Moriyama T, Yamagata K, Tsuruya K, Fujimoto S, Narita I, Konta T, Kondo M, Shibagaki Y, Kasahara M, Watanabe T, Shimabukuro M
(尾形絵美、旭浩一、山口怜、井関邦敏、佐藤博亮、守山敏樹、山縣邦弘、鶴屋和彦、藤元昭一、成田一衛、今田恒夫、近藤正英、柴垣有吾、笠原正登、渡辺毅、島袋充生)

概要

論文掲載誌:「Scientific Reports」( 2018 Sep 17)


 最近、糖尿病患者では低血糖が予後不良因子であることが注目されています。また非糖尿病者では空腹時血糖値 70mg/dL未満で心血管疾患(CVD)発症が増えることが知られていますが、糖尿病発症との関係は不明でした。私たちは、特定健診をベースにした大規模コホートで空腹時血糖値レベルと糖尿病発症の関係を検討しました。

 対象は、糖尿病のない特定健診受診者186,749名で、3年間の糖尿病新規発症の多因子調整オッズ比(OR)を求めました。対象者を空腹時血糖値で8群に分け85-89mg/dL群を対照にしました。全対象者では、70mg/dL未満(OR 1.80, 95%CI 1.05-3.09)と90mg/dL以上でOR上昇。CVDなし群は70mg/dL未満(OR 1.96, 95%CI 1.12-3.43)、90mg/dL以上でORが上昇しました。CVDあり群では、95mg/dL以上でORが上昇しました。

 本研究で、空腹時血糖値 <70mg/dlは、あらたな糖尿病発症ハイリスク群であることがわかりました。<70mg/dLでは、糖尿病発症を介したCVD発症リスクも示唆されます。空腹時血糖値 70mg/dL未満になる機序は不明ですが、肥満症・異所性脂肪がベースとなっている可能性があります。この機序の解明は、糖尿病発症予防の新たな戦略につながることが期待されます。


連絡先

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