福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Arthritis Research & Therapy」掲載(平成30年8月オンライン)(2018-09-26)

Tofacitinib inhibits granulocyte-macrophage colony-stimulating factor-induced NLRP3 inflammasome activation in human neutrophils

トファシチニブはヒト白血球におけるGM-CSF誘導性のNLRP3インフラマソーム活性化を阻害する

古谷 牧子 (ふるや・まきこ)
医学部 リウマチ膠原病内科学講座 助手
        
研究グループ
Makiko Yashiro Furuya, Tomoyuki Asano, Yuya Sumichika, Shuzo Sato, Hiroko Kobayashi, Hiroshi Watanabe, Eiji Suzuki, Hideko Kozuru, Hiroshi Yatsuhashi, Tomohiro Koga, Hiromasa Ohira, Hideharu Sekine, Atsushi Kawakami and Kiyoshi Migita

概要

論文掲載雑誌:「Arthritis Research & Therapy」(August 29, 2018)


 GM-CSFは顆粒球系前駆細胞を刺激して好中球、好酸球、マクロファージへの分化を誘導しますが、最近の研究で、組織の炎症を惹起する重要なサイトカインであることが判ってきました。しかし、自然免疫におけるGM-CSFの分子生物学的な作用については殆ど知られていませんでした。今回、我々はヒト好中球を用いて、GM-CSFによるインフラマソーム及びIL-1βの活性化機構と細胞内シグナリング伝達について解析しました。

 GM-CSFは好中球に作用し、単独で、NLRP3インフラマソーム及びカスパーゼ1の活性化を介して、IL-1βの産生を誘導することを明らかにしました。また、GM-CSFで誘導されるインフラマソームの活性化には、JAK2/STAT3のリン酸化が関与しており、JAK阻害剤であるトファシチニブはJAK2/STAT3のシグナル伝達をブロックし、NLRP3インフラマソームの活性化及びIL-1βの産生を完全に阻害することを明らかにしました。

 GM-CSFを標的とする分子標的治療は、リウマチなどの自己免疫疾患の新たな治療として注目されています。本研究により、GM-CSFが単独で自然免疫系の細胞に作用し、インフラマソームの活性化を誘導することが確認されました。これら研究結果は、GM-CSFが獲得免疫系だけでなく自然免疫系の細胞の活性化を介して、自己免疫疾患に加え、自己炎症疾患などの炎症病態形成に関わる重要なサイトカインであることを示しています。さらに、低分子化合物を用いJAKキナーゼを阻害することで、自己免疫疾患のサイトカインネットワークに加え、自己炎症のシグナルを阻害することより、JAK阻害剤の炎症病態への治療応用が示唆されました。

(古谷 牧子)


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