福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「British Journal of Surgery」掲載(平成30年4月掲載)(2018-06-12)

Prediction of major complications after hepatectomy using liver stiffness values determined by magnetic resonance elastography

MRエラストグラフィーによる肝硬度測定を用いた肝切除術後合併症の予測

佐藤 直哉 (さとう・なおや)
医学部 肝胆膵・移植外科学講座 助教
        
研究グループ
佐藤直哉、見城明、木村隆、岡田良、石亀輝英、小船戸康英、志村龍男、阿部和道、大平弘正、丸橋繁

概要

論文掲載雑誌:「British Journal of Surgery」(2018.April.23)


研究の背景

 慢性肝炎により肝線維化を来した患者さんへの肝切除は、正常な肝臓の患者さんと比較して、術後合併症の頻度が高いことが知られております。しかし、これまで肝線維化診断には侵襲的な肝生検を必要とし、術前に十分評価することができませんでした。

 近年開発されたMRエラストグラフィーは、肝臓に伝播される波の速度をMRIで検出するという原理で、肝硬度を測定します(図1)。福島県立医科大学では、全国に先駆けて、2013年よりMRIを用いたエラストグラフィーが導入され、肝線維化診断に用いられてきました。この技術によって、体に負担のない肝線維化診断が可能となり、術前に肝線維化の程度を知ることができるようになりました。

 こうした背景から、本研究ではMRエラストグラフィーで測定された肝硬度(肝線維化の程度)が肝切除術後合併症の発生予測に有用かどうかを検討しました。

 

研究の内容

 本研究では、MRエラストグラフィーによって測定された肝硬度(肝線維化の程度)が、肝切除術後合併症の発生予測に有用であることを世界で初めて報告しました。この研究では、肝切除を受ける患者さんを対象としてMRエラストグラフィーによる肝硬度測定を実施し、肝切除術後合併症の発生を観察しました。その結果、肝線維化の強い患者群では難治性腹水や胸水貯留などの合併症が多く発生することが示され、さらに肝硬度(肝線維化の指標)とアルブミン値(タンパク合成能の指標)を組み合わせることによって、肝切除術後合併症の発生を効率的に予測できることが明らかになりました(図2)。

 

今後の展望

 肝線維化に基づいた肝切除リスクを術前に理解することで、門脈圧の高い患者さんに適した術式選択や周術期管理を実践することが可能となり、手術成績の向上に寄与できるものと考えられます。

 

 図1

 図2


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