福島県立医科大学 研究成果情報

スイス科学誌「Frontiers in Immunology」掲載(平成30年5月)(2018-06-14)

Essential Roles for Mannose-Binding Lectin-Associated Serine Protease-1/3 in the Development of Lupus-Like Glomerulonephritis in MRL/lpr Mice

MRL/lprマウスのループス様腎炎病態におけるMannose-binding lectin-associated serine protease-1/3(MASP-1/3)の役割

関根 英治(せきね・ひではる)
医学部 免疫学講座 教授
町田 豪(まちだ・たけし)
医学部 免疫学講座 学内講師
        
研究グループ
町田豪、坂本夏美、石田由美、高橋実、藤田禎三、関根英治

概要

論文掲載雑誌:「Frontiers in Immunology」(May 28, 2018)


 代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus; SLE)では、自己成分に反応する自己抗体の出現と、それに伴う補体系の活性化が腎炎(ループス腎炎)などの臓器障害に関与することが知られています。補体系の活性化には、古典経路、レクチン経路、第二経路という3つの異なる経路が存在します。これまでにSLEにおいて、古典経路の抑制は病態をさらに悪化させること、一方、第二経路の抑制は有効な治療戦略となり得ることが示されていますが、レクチン経路の役割は明らかになっていません。よって、SLEの病態解明と治療法の開発のためには、レクチン経路を含めた個々の補体活性化経路の病態への役割を解明することが重要と考えられます。

 これまで我々のグループは、タンパク質分解酵素の一種である補体因子Mannose-binding lectin-associated serine protease-1(MASP-1)とMASP-3は、レクチン経路と第二経路の両方の活性化に必須であることを報告しました(Takahashi et al. J Exp Med, 207: 29-37, 2010)。今回我々は、MASP-1とMASP-3の両者を欠損したSLEモデルマウス(MASP-1/3欠損MRL/lprマウス)を作成し、ループス腎炎の病態形成におけるこれらの役割を調べました。

 その結果、レクチン経路と第二経路の両者の活性化能を持たないMASP-1/3欠損MRL/lprマウスでは、野生型MRL/lprマウスでみられる低補体血症の改善が認められ、さらに腎糸球体の病理所見や蛋白尿が著しく改善されることを見出しました。

 

 本研究は、SLEのループス腎炎における補体因子MASP-1およびMASP-3の関与を世界で初めて示したものです。レクチン経路と第二経路を抑制した効果は、これまでに報告されている第二経路のみを抑制したSLEモデルマウスの所見と比較して改善効果が大きく、これらの補体因子を標的としたレクチン経路と第二経路の両者の抑制が、ループス腎炎に対して極めて有効な治療戦略となり得ることを示しています。

(町田 豪、関根 英治)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 免疫学講座

教授 関根 英治、学内講師 町田 豪

電話:024-547-1148/FAX:024-548-6760

講座ホームページ http://www.fmu.ac.jp/cms/immunol/index.html

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