福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Journal of Psychiatric Research」掲載(平成30年5月)(2018-06-08)

DNA methylation of ANKK1 and response to aripiprazole in patients with acute schizophrenia: A preliminary study

統合失調症急性期においてANKK1遺伝子のメチレーションがaripiprazoleへの治療反応性に及ぼす影響

三浦 至 (みうら・いたる)
医学部 神経精神医学講座 准教授
        
研究グループ
Itaru Miura, Yasuto Kunii, Mizuki Hino, Hiroshi Hoshino, Junya Matsumoto, Keiko Kanno-Nozaki, Sho Horikoshi, Haruka Kaneko, Miki Bundo, Kazuya Iwamoto, Hirooki Yabe

概要

論文掲載雑誌:「Journal of Psychiatric Research」(May, 2018)


 統合失調症をはじめとする精神疾患の薬物療法では、治療効果や副作用を事前に予測することは難しく、予測因子や生物学的なマーカーが待望されています。薬理遺伝学・ゲノム薬理学は、遺伝子や遺伝的要因が薬剤反応に影響を及ぼすかどうかを検討する学問であり、個別化(オーダーメイド)医療を進めるものとして期待されてきました。これまで統合失調症における薬理遺伝学研究では、塩基配列の違い(一塩基多型)と薬剤応答との関連について研究されてきました。

 本研究は、統合失調症において一塩基多型ではなく遺伝子が後天的に受けるメチル化という機構と薬剤反応についての関連について検討したものです。本研究では次世代シークエンサーを用い、急性期統合失調症においてANKK1 (ankyrin repeat and kinase domain containing 1)遺伝子のDNAメチル化が抗精神病薬(aripiprazole)への治療反応性とドパミン、ノルアドレナリンなどのモノアミン代謝にどのように影響するかを調べました。 解析の結果、ANKK1遺伝子のCpG site 387におけるメチル化はaripiprazole反応群において非反応群に比し有意に高く(p=0.017)、治療による臨床症状の変化とも相関していました(PANSS total score: r=-0.393, p=0.031)。さらに、反応群におけるメチル化と血漿モノアミン代謝産物濃度(homovanillic acid: r=0.587, p=0.035; 3-methoxy-4hydroxyphenylglycol: r=0.684, p=0.010)との間には有意な正の相関を認めました。

 本研究は統合失調症においてANKK1遺伝子のメチル化が抗精神病薬の反応性やドパミン神経伝達に影響を与える可能性を示唆しており、統合失調症のゲノム薬理学におけるエピジェネティクス研究の重要性を示すものと考えられます。


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