福島県立医科大学 研究成果情報

日本泌尿器腫瘍学会 第3回学術集会 学術集会奨励賞〔平成29年10月受賞〕(2017-10-23)

腎癌におけるMET発現と分子標的耐性への関与

石橋 啓 (いしばし・けい)
医学部 泌尿器科学講座 准教授
        

今回の受賞について

【 日本泌尿器腫瘍学会(Japan Society of Urologic Oncology) 】
泌尿器悪性腫瘍の診療はこれまでは泌尿器科医が一手にその責を担ってきました。しかし、泌尿器悪性腫瘍の治療は高度化かつ多様化し、様々な分野の専門家を含めたチーム医療体制構築の必要性が高まってきていました。そのような背景のなか、泌尿器科医のほか、腫瘍内科医や放射線科医、腫瘍病理医など複数の専門領域の専門家が中心となって、泌尿器悪性腫瘍の診療、研究を縦軸とした横断的な専門学会の必要性が高まり、2015年に日本泌尿器腫瘍学会 が立ち上げられました。

【 賞について 】
今回の日本泌尿器腫瘍学会 第3回学術集会においては、泌尿器科を中心に、腫瘍内科、放射線治療科等から計95演題が集まり、その中から学術集会奨励賞候補演題が採択されました。最終的に学術集会でのプレゼンテーションの後、本演題が学術集会奨励賞に選ばれました。

 

概要

我々はこれまで、進行性腎癌に対する分子標的薬TKIの治療の際に、腫瘍から分泌されるIL-6が薬剤耐性の機序となり得る事を報告してまいりました(Ishibasahi K et al. Oncotarget 2017)。 しかし、実際に臨床症例の経過を見ていますと、そのメカニズムだけでは説明できない例も存在しておりました。 現在欧米では、VEGFRとMETを阻害するCabozantinibが進行性腎癌に対する治療薬として承認されております。そこで我々は、腎癌のTKI耐性にMETも関わっているのではと考えて研究を進めてまいりました。その研究の中でまず、METを強く発現する腎癌株はTKI投与でVEGFを分泌し、細胞活性が上がるのに対し、Cabozantinibではそれらが抑制される事を見いだしました。つまりTKI耐性化にIL-6の他にMETも関わっている腎癌があることが考えられました。さらに、当院において2008年~2011年に腎腫瘍として手術を施行した手術標本におけるMET発現を解析し、経過を追ったところ、MET高発現群ではMET低発現群に比較して、有意に無増悪生存期間が低いこと、そして再発時のTKI投与に対する反応が、MET低発現の患者より有意に低いことが判明しました。Cabozantinibは今後、本邦でも進行性腎癌に対する治療薬として承認される方向になると考えられますが、原発巣におけるMET発現がTKIを使うか、Cabozantinibを使うかのマーカーになると考えられました。 今後もより一層、腎癌の臨床に役立つ研究を積み重ねていきたいと考えております。

(石橋 啓)


関連サイト

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 泌尿器科学講座  准教授 石橋 啓
電話 024-547-1316 / FAX 024-548-3393
講座ホームページ http://www.urology.fmu.ac.jp/
メールアドレス 
(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)