福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌「PLOS ONE」 掲載〔平成29年7月〕(2017-07-24)

Lipopolysaccharide inhibits myogenic differentiation of C2C12 myoblasts through the Toll-like receptor 4-nuclear factor-κB signaling pathway and myoblast-derived tumor necrosis factor-α

LipopolysaccharideはToll-like receptor 4-nuclear factor-κBおよびautocrine / paracrine tumor necrosis factor-α経路を介してマウス筋芽細胞の筋形成を抑制する

大野 雄康 (おおの・ゆうこう)
薬理学講座 大学院生
        
研究グループ
大野 雄康( 医学部 薬理学講座/附属病院 救命救急センター)、坂本 多穂(医学部 薬理学講座)

概要

論文掲載雑誌:「PLOS ONE」(2017 Jul. 24) リポポリサッカライド (以下 LPS) はグラム陰性細胞壁の主要構成要素で、敗血症という重症感染症を引き起こします。敗血症の患者様に、単なる廃用症候群では説明がつかない重篤な骨格筋萎縮が起こる事があります。これによりリハビリテーションが妨げられ、患者様の離床が遅れ、生活の質が低下します。これは患者様のみならず、そのご家族や社会にとっても大きな損失となります。 今回、我々はLPSが骨格筋の再生/形成プロセスを妨げる生命現象およびその分子メカニズムを明らかにしました。 LPSは筋芽細胞 (骨格筋の前駆細胞) 上に発現するToll like receptor 4に結合し、核内転写因子NF-κBの活性を用量依存的に上昇させました。LPSはこのNF-κBの活性上昇を通し、骨格筋形成の正の分子スイッチ (myogenin, MyoD) の発現量を低下させ、負のスイッチ (myostatin)の発現を上昇させ、骨格筋形成プロセスを妨げていました。さらにLPSに刺激された筋芽細胞自身が分泌する炎症性サイトカイン(TNF-α)も、同様の経路で骨格筋再生能を低下させていました。Toll like receptor 4の特異的阻害剤 TAK-242 または TNF-αの中和抗体を投与すると、LPSによる骨格筋の再生能力低下が有意に回復しました。 医学の発展により、救命に成功する敗血症の患者様は増えています。これに伴い近年は筋力の維持などの、機能的予後の維持に焦点が当たるようになってきました。 今回の発見はLPS誘発性骨格筋萎縮の機序の解明と同時に、その薬物治療の基盤となる事が期待されます。 本研究の詳細については、以下のリンクをご参照ください。 http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0182040 〔英語〕

(大野 雄康)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 薬理学講座  大学院生 大野 雄康
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