福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌「Oncotarget」 掲載 〔平成29年7月〕(2017-07-21)

Overriding TKI resistance of renal cell carcinoma by combination therapy with IL-6 receptor blockade

腎癌におけるIL-6受容体シグナル制御によるTKI耐性の克服

石橋 啓 (いしばし・けい)
泌尿器科学講座 准教授
        
研究グループ
石橋 啓、秦 淳也、胡口智之、矢部通弘、片岡政雄、小川総一郎、平木宏幸、羽賀宣博、柳田知彦、杉野 隆、久保 均、小島祥敬
Tobias Haber, Ines Breuksch, Susanne Gebhard, Joachim W. Thuroff, Dirk Prawitt, Walburgis Brenner

概要

論文掲載雑誌:「Oncotarget」(2017 Jul. 21) 進行性腎癌に対する治療法として、分子標的薬が第一選択薬剤として使用される。しかし、その効果は限定的であり、分子標的薬に対して耐性を示す症例が多く認められる。一方、進行性腎癌においては、血清IL-6の高値が予後不良因子の一つとなりうることが知られている。本研究において、腎癌細胞のなかに、分子標的薬に暴露された場合IL-6を自己分泌するのもが有ることを見いだした。IL-6を分泌する腎癌細胞では、分子標的薬、特にSorafenib、Sunitinibを投与するとAkt-mTOR、NFκBが活性化し、VEGFを分泌し細胞活性が上がる事が判明した。PazopanibではNFκBが活性化は認められなかった。抗IL-6受容体抗体Tocilizumabと分子標的薬Sorafenibを併用すると、Akt-mTOR、NFκBの活性化、細胞活性、VEGF分泌は抑制された。ヌードマウス皮下移植モデルを用い、SorafenibとTocilizumabの併用療法を、Sorafenib単独療法と比較した場合、Sorafenib単独療法では治療初期に減少した腫瘍内CD31陽性細胞が治療後期に増加してくるのに対し、Sorafenib・Tocilizumabの併用療法群では腫瘍内CD31陽性細胞の増殖と、動物用PET-CTを用いた解析で腫瘍のSUV値が有意に抑制されていた。これらのことから、腎癌の分子標的薬耐性は、腎癌細胞が分泌するIL-6によるものであると考えられ、分子標的薬と抗IL-6受容体抗体の併用 が新たな治療戦略となり得ることが示された。

(石橋 啓)


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 泌尿器科学講座  准教授 石橋 啓
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講座ホームページ http://www.urology.fmu.ac.jp/
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