福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Scientific Reports」掲載〔平成29年3月〕(2017-03-27)

Decreased 16:0/20:4-phosphatidylinositol level
in the post-mortem prefrontal cortex of elderly patients
with schizophrenia

統合失調症では前頭葉(前頭前野)で16:0/20:4脂肪酸残基を含むフォスファチジルイノシトールが減少している-高齢の統合失調症罹患者の死後脳を用いた検討-

松本 純弥 (まつもと・じゅんや)
医学部 神経精神医学講座 助教
        
研究グループ
Matsumoto J、Nakanishi H、Kunii Y、Sugiura Y、Yuki D、Wada A、Hino M、Niwa SI、Kondo T、Waki M、Hayasaka T、Masaki N、Akatsu H、Hashizume Y、 Yamamoto S、Sato S、Sasaki T、Setou M、Yabe H

概要

論文掲載雑誌:「Scientific Reports」 (Published online:23 March 2017)

統合失調症の病態にはリン脂質の異常が関わっています。
リン脂質は脳機能に不可欠な生理活性物質の原料になっています。統合失調症の脳内でのリン脂質の量と種類の変化を調べるために、私たちは複数の死後脳サンプルのリン脂質全体の解析を液体クロマトグラフ-エレクトロスプレーイオン化タンデム型質量分析と質量顕微鏡解析を用いて実施しました。
その結果、16:0/20:4という種類の脂肪酸残基を含むフォスファチジルイノシトールが統合失調症では前頭葉(前頭前野)で減少していることを液体クロマトグラフ-エレクトロスプレーイオン化タンデム型質量分析で発見し、質量顕微鏡解析により灰白質で減少していることを確かめました。

これまでに統合失調症の脳でフォスファチジルイノシトールを解析した研究では、脂肪酸残基の種類と結合部位別の違いまで調べた研究は世界的にもありませんでした。今回の研究は統合失調症の患者さんの脳内で、フォスファチジルイノシトールの脂肪酸組成まで解明した初めての研究となります。
フォスファチジルイノシトールの脂肪酸組成の違いは神経機能にも影響が出るため、統合失調症の病態に関わり得るものです。16:0/20:4脂肪酸残基を含むフォスファチジルイノシトールが前頭葉(前頭前野)で減少していることが、統合失調症の病態にどのように関わっているのかについて明らかにするにはさらなる検討が必要ですが、私たちの発見が統合失調症の新たな治療のヒントになるものと考えられます。

(松本純弥)


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