福島県立医科大学 研究成果情報

第12回 日本統合失調症学会 奨励賞 〔平成29年 3月受賞〕(2017-03-23)

死後脳内において高頻度にコピー数多型(CNV)が観察された 統合失調症3症例の臨床的特徴について

長岡 敦子 (ながおか・あつこ)
医学部 神経精神医学講座 専攻医

研究グループ
長岡敦子1、國井泰人2、松本純弥1、和田明1,3、日野瑞城1、丹羽真一2、那波宏之4、高橋 均5、柿田明美6、赤津裕康7,8、橋詰良夫8、山本左近8、尾関祐二9、矢部博興1


1 福島県立医科大学 神経精神医学講座 / 2 福島県立医科大学 会津医療センター 神経精神医学講座 / 3 東京大学医学部附属病院 精神神経科 / 4 新潟大学脳研究所 基礎神経科学部門 分子神経生物学分野 / 5 新潟大学脳研究所 病態神経科学部門 病理学分野 / 6 新潟大学脳研究所 脳科学リソース研究部門 脳疾患標本資源解析学分野 / 7 名古屋市立大学大学院医学研究科 地域医療教育学/地域療養医学 / 8 医療法人さわらび会 福祉村病院 長寿医学研究所/神経病理研究所 / 9 獨協医科大学 精神神経医学講座

        

今回の受賞について

【 日本統合失調症学会 】
統合失調症に関する診療、研究、教育に携わる医学・医療関係者が集まり、統合失調症に関する研究を総合的に推進し、統合失調症の理解の普及を図り、精神医学・精神医療の発展と精神保健の充実に寄与するため、2005年に設立されました。
【 奨励賞 】
医療・保健・福祉等機関・施設、大学、研究機関等に所属し、統合失調症の診療、教育、研究に携わる医学・医療・保健・福祉等関係者であることを応募資格とし、一般演題発表者のうち応募者の中から、大会が選定する評価委員による採点を集計、客観評価し、若干名選定されるものです。


概要

私は「福島精神疾患死後脳バンク」(http://www.fmu-bb.jp/index.htm ) の運営に従事しており、同バンクのサンプルを用いた統合失調症発症のメカニズムに関する研究を行っております。当バンクの特徴として、遺族との面談、治療機関への聞き取り、診療録をもとに心理学的剖検を行い、詳細な生前の臨床プロフィールと、臨床情報をレビューしたDIBS(Diagnostic Instrument for Brain Science)を作成、DIBS上で該当する症状項目をスコア化していることがあげられます。 私たちはこれまで、死後脳を用い統合失調症と健常対照との間での脳内のタンパク質発現の比較解析を行ってきました。また、GWASでサンプルの全ゲノム関連解析を行ってきましたが、今回私たちは遺伝的多様性の要因の一つであるといわれるコピー数多型(Copy Number Variant ;CNV)について、当バンクで保有する死後脳サンプルについて検討し、統合失調症群において特にCNVの頻度が高い3例を見出しました。この3例について臨床情報、脳内のタンパク質発現量について検討した結果、3例はいずれも長期入院を必要としたこと、3例と他のSz群及び健常対照の脳内のタンパク質発現を比べると、3例はより低下している傾向にあること、1例は染色体転座を伴っており、タンパク質発現において特に外れた値をとる傾向にあることが分かりました。 CNVの頻度が高いという遺伝的影響が大きい症例では、特に統合失調症発症にかかわるメカニズムが死後脳において観察されやすく、死後脳による検証が有効と考えられ、このような症例を詳細に検討することで、統合失調症病態の生物学的理解が進展することが期待されます。

(長岡 敦子)


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