福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌「Free Radical Biology and Medicine」掲載 〔平成28年2月〕(2015-08-28)

Senescence marker protein-30 deficiency impairs angiogenesis under ischemia

SMP30欠損により虚血後の血管新生は障害される

山内 宏之(やまうち・ひろゆき)
循環器・血液内科学講座 大学院生
三浦 俊輔(みうら・しゅんすけ)
循環器・血液内科学講座 大学院生
        

概要

論文掲載雑誌: Free Radical Biology and Medicine 2015 Aug. 28 〔2016.Feb. ePub 〕 虚血後の血管新生におけるSMP30の働き

心臓に本来そなわっている血管が閉塞し、心筋が酸素不足に陥ると、血管新生という仕組みを介し、既存の血管から新しい血管が形成され、血液の供給を補うようになります。「 ヒトは血管とともに老いる」と言われていますが、血管の老化は、この血管新生能を弱めてしまう原因となっています。 本県では、加齢とともに進行する動脈硬化性疾患、特に心筋梗塞による死亡率が全国一となっていますが、虚血後の血管新生能の減弱は、高齢者の虚血性心疾患の増悪に大きく関与しております。

我々は、生体において加齢とともに減少していく蛋白 SMP30(Senescence marker protein-30) に注目し、虚血と血管新生への関与について解明すべくマウスを用いて基礎研究を行いました。 SMP30の発現が低下した老化マウスでは、若いマウスに比べて下肢の血管閉塞による虚血後の血管新生が減弱していました。SMP30の発現の低下は、酸化ストレスの増悪を介して、種々の血管新生因子や血管拡張に大きく関与する一酸化窒素の産生を障害していることが判明しました。 心血管疾患にとって、加齢は回避することのできない危険因子であり、血管も含めて体の若返りは人類にとっての夢であるとも言えます。本研究は、SMP30や酸化ストレスの軽減が、高齢者の血管新生能や虚血性心疾愚の予後を改善する可能性を示唆しており、将来的な臨床応用が期待されております。

(山内宏之、三浦俊輔)


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