福島県立医科大学 研究成果情報

ヨーロッパ心臓病学会 2015ベストポスター賞 〔平成27年8月受賞〕(2015-08-31)

Phosphodiesterase 3A1 Protects the Heart against Isoproterenol‐induced Cardiac Injury via Anti‐oxidative Mechanism

ホスホジエステラーゼ3Aは抗酸化作用によりイソプロテレノール誘発性心筋障害を減弱する

及川 雅啓 (おいかわ・まさよし)
循環器・血液内科学講座 助教
        
研究グループ
及川雅啓、岩谷章司、齋藤修一、Chen Yan,、竹石恭知

今回の受賞について

【 ヨーロッパ心臓病学会(European Society of Cardiology)】
ヨーロッパ心臓病学会(European Society of Cardiology)は、 会員数8万人を超える世界最大規模の循環器学会であり、 2015年にロンドンで行われた学術集会は3万人以上が参加しました。

概要

背景: 心不全病態において酸化ストレスは重要であり、β受容体刺激は不全心において酸化ストレスを亢進することが知られている。ホスホジエステラーゼ3A (PDE3A)はcAMPの代謝を介してβ受容体刺激を減弱させることから、PDE3Aが抗酸化作用により心筋保護効果を有するか検討を行った。 方法・結果: 野生型マウスもしくは心臓特異的PDE3A過剰発現(TG)マウスに対し、浸透圧ミニポンプを用いて、イソプロテレノール (ISO,30mg/kg/day)の7日間持続皮下投与を行った。 野生型マウスにおいては、生食投与群と比較し、ISO投与により心重量/体重比が有意に増加したのに対して (5.3±0.2 mg/g vs. 4.4±0.1 mg/g, P<0.05)、TGマウスにおいては、有意な変化は認められなかった(5.9±0.3 mg/g vs. 5.3±0.2 mg/g, ns)。 心エコーでは、野生型マウスにおいて心室中隔壁厚増加が認められたが (1.11±0.04 mm vs. 0.86±0.04 mm, P<0.05)、TGマウスでは変化は認められなかった (0.98±0.04 mm vs. 0.93±0.05 mm, ns)。 酸化ストレス障害マーカーである8‐OHdGに対する免疫染色を行ったところ、野生型マウスにおいては、ISO投与により8‐OHdG陽性領域が増加(14.9±3.7% vs. 7.4±1.1%, P<0.05)したのに対して、TGマウスでは変化が認められなかった(13.9±1.9% vs. 12.0±2.8%, ns)。 さらに、心筋細胞アポトーシスは野生型マウスでは増加したが (0.05±0.01% vs. 0.02±0.01%, P<0.05)、TGマウスでは増加を認めなかった(0.04±0.01% vs. 0.03±0.01%, ns)。TGマウスでは、抗酸化作用を有するSirt1タンパクの発現が野生型マウスと比較して増加しており (1.9±0.2 AU vs. 1.0±0.1 AU, P<0.01)、ISO投与後もその発現は維持されていた(2.8±0.2 AU vs. 1.3±0.2 AU, P<0.01)。 結語: これらの結果から、PDE3Aはβ受容体とSirt1シグナルの相互作用を介して抗酸化作用を発揮し、ISO誘発性の心筋障害を減弱したものと考えられた。

(及川 雅啓)


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