福島県立医科大学 研究成果情報

第55回 日本臨床ウイルス学会 若手奨励賞 〔平成26年6月受賞〕(2014-06-14)

「RSV臨床分離株におけるF蛋白パリビズマブ結合部塩基配列の解析」

佐藤 淑子 (さとう・としこ)
福島県立医科大学医学部 小児科学講座 医療技師
        
研究グループ
福島県立医科大学 医学部 小児科学講座: 橋本浩一、佐藤晶論、宮崎恭平、細矢光亮             

今回の受賞について

【 日本臨床ウイルス学会 】
臨床医学に直接関係する病原ウイルスの診断技術の研究交流を目的として、1960年からはじめられた臨床ウイルス談話会が発展して大きくなり、1984年から日本臨床ウイルス学会となりました。臨床ウイルス学の進歩を促進し、会員相互の連絡をはかることを目的としています。
昨年度までで55回の学術集会が開催され、平成25年度の会員数は780名となっています。

【 若手奨励賞 】
当学会では、若手研究者の励みとなるように若手奨励賞を設置しています。 対象者は年次学術集会において発表された演題の発表者を対象とし、発表年で40歳以下となっています。
研究内容に関しては臨床研究、基礎研究、疫学研究、検査法等に関する発表で、その分野を問わず新規性、独創性を有する研究で臨床ウイルス学の分野での発展が期待できるものとしています。

 

概要

【目的】
パリビズマブは、遺伝子組み換え技術を用いて作製された、Respiratory Syncytial Virus(RSV)Fタンパクの抗原部位A領域を標的としたヒト化モノクローナル抗体である。RSVが宿主細胞に感染する際、ウイルスと細胞との融合に関与するFタンパクに結合することで、中和活性を示し感染を抑制する。本剤はRSV感染症ハイリスク児に対し、1998年から米国にて使用開始され、本邦でも2002年から使用されている。海外において、パリビズマブ中和抵抗性変異を有するRSV臨床株の検出報告がある。今回、F蛋白パリビズマブ結合部アミノ酸配列の変異について検討するため、福島県におけるRSV感染症患児由来のRSV臨床分離株、当講座保有RSV株を解析した。

【方法】
2001年に米国で分離され米国Vanderbilt大学より分与された3株、2004年から2008年に分離され仙台医療センターウイルスセンターからの分与17株、2008年1月から2013年10月に、福島県内の医療機関において、RSV下気道炎の診断で入院した患児の鼻汁検体由来の99株、計116株(サブグループA:109株、B:10株)を材料とした。F遺伝子をnested RT-PCR法で増幅後、ダイレクトシークエンス法で塩基配列を決定し、パリビズマブ結合部位のアミノ酸配列を検討した。

【結果】
これまでに報告されているパリビズマブ中和抵抗性を示すアミノ酸変異のN262D/S、N268I、K272E/M/N/Q/T、S275F/L変異は検出されなかった。パリビズマブ中和抵抗性を示すアミノ酸変異としては諸説のある、N276S変異が2007年頃より検出された。この変異は、海外での報告と同様に2007-2008年頃から現れ始め、2009年からは解析株の90%以上にみられた。

【結語】
パリビズマブ中和抵抗性変異を有する株はなかった。F蛋白を標的とした中和抗体による選択圧により出現したと考えられるN276S変異が優勢化し、また、パリビズマブ投与の適応拡大が進められている昨今の状況より、継続的な解析が必要であると考えられる。

(佐藤淑子)


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