福島県立医科大学 研究成果情報

平成25年度 日本質的心理学会 学会賞 優秀論文賞 〔平成25年8月受賞〕(2013-06-30)

「Life Ethnography of a Life of a Person with Intractable Neurological Diseases: Based on "Thick Description" of Home-care」

神経難病患者の生を捉えるライフ・エスノグラフィ  ― 在宅療養の場の厚い記述から

日高 友郎 (ひだか・ともお)
福島県立医科大学医学部 衛生学・予防医学講座 助手
        

今回の受賞について

【 日本質的心理学会 】
日本質的心理学会は、2004年(平成16年)に創立された若い意欲あふれる学会です。
質的研究は21世紀になってから学横断的・国際的に幅広い学問領域において発展してきました。質的研究を教育、保育、医療、福祉、地域、芸術、経済など幅広い現場に活かすことを目指し、心理学・社会学・人類学などの人文社会科学の研究者だけでなく、医師・看護師、社会福祉・介護などの専門職など、1030名(2013年8月現在)の会員が相互研鑽しています。

【 日本質的心理学会 学会賞 優秀論文賞 】
完成度・有益性・発展性の評価基準を満たした優秀論文を選出、表彰するものであり、2009年(平成21年)に創設されました。

概要

21世紀の「在宅療養・地域包括ケア」へと医療の文脈そのものが大きく変容している現場において、少数の難病患者がどのようにして「在宅」という現場で「生活者」として生き抜いているかを理解することは、実践的支援にも繋がる重要な課題です。
このような領域においては 参照すべき既存のモデルも十分でないなか、ボトムアップ的に研究を積み重ねた点が評価され、受賞に至りました。

本研究では、筋萎縮性側索硬化症という難病をわずらう患者さんの在宅療養の場を、約3年間にわたり定期的に訪問し、現場の人々の行動の観察的な記述を行うことで、難病を抱えながらの日常生活が円滑に進むための要因についての検討を行いました。
その結果、患者本人と家族・介護者(支援者)が、「他律の回避」(患者自身の判断・決定を常に最大化する方針をとること)を共通の目標とすることが、患者自身にとって最も快適と感じられるような療養環境の実現に大きく関わっていることが示唆されました。

個別性に対応した支援、QOLの高い生活などは昨今の重要な課題でもあり、現場からの知見を蓄積していくことが今後も求められています。

(日高 友郎)


関連サイト

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 衛生学・予防医学講座
電話 024-547-1175 / FAX 024-547-1174
講座ページ http://www.fmu.ac.jp/home/hygiene/
〔受賞論文 関連ページ http://www.fmu.ac.jp/home/hygiene/award2013_hidaka.html
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