福島県立医科大学 研究成果情報

米国雑誌 「Journal of Biological Chemistry」(2007-12-07)

アルツハイマー病の早期診断の手がかりを発見

―米国雑誌Journal of Biological Chemistry で研究成果を発表―

 本学 医学部 生化学講座 橋本康弘教授(CREST, JST)は共同研究を通じて、アルツハイマー病の“原因酵素”であるβセクレターゼがα2,6-シアル酸量を増加させることを発見し、本疾患の早期診断の端緒を開きました。
 アルツハイマー病の原因はβセクレターゼ活性の上昇ですから、α2,6-シアル酸量をモニターして早期診断する可能性がひらかれました。また、アルツハイマー病の治療薬としてβセクレターゼ阻害剤が開発されつつありますが、この薬効の指標にも応用されると考えています。
 なお、詳しくは以下を御覧ください。

 高齢化社会を迎え、アルツハイマー病をはじめとする認知症の早期診断と治療法の開発が重要な社会問題となっています。アルツハイマー病患者の脳にはアミロイド班と神経原繊維変化の2つの病的変化が観察されます。このうちアミロイド班の形成が先行し、これが原因となってアルツハイマー病が引き起こされると考えられています。アミロイド班は神経毒性のAβ(ベータ)ペプチドの沈着によって形成されますが、このペプチドはアミロイド前駆体タンパク質が2箇所で切断されることによって生じます。この切断を行うのがβセクレターゼとγセクレターゼです。アルツハイマー病では、βセクレターゼ活性が上昇し、このため神経毒性のAβペプチドの産生が亢進し、病変を引き起こすと考えられています。従って、アルツハイマー病の一義的な原因はβセクレターゼ活性の上昇であり、これを効率よくモニターすることが出来れば発症以前の早期に診断を行うことができます。また、βセクレターゼの作用を阻害する薬物は有効な治療薬になると考えられています。
 βセクレターゼ活性のモニターには、その活性により作り出される産物を測る手法が考えられます。しかし、産物の一つであるAβは凝集しやすい物質であり、その測定によるβセクレターゼ活性のモニターは困難でした。今回、福島県立医科大学医学部生化学講座 橋本康弘教授(CREST, JST)は理化学研究所フロンティア研究システム・システム糖鎖生物学研究グループ・疾患糖鎖研究チーム(谷口直之グループディレクター・北爪しのぶサブチームリーダーら)、大阪大学との共同研究を通じてα2,6シアル酸量がβセクレターゼ活性の良い指標となることを見出し、早期診断の端緒を開きました。また、この指標はアルツハイマー病の治療薬として開発されつつあるβセクレターゼ阻害剤の薬効評価にも応用が期待されます。
 アルツハイマー病は記憶障害や認知症などではじまりますが、病気の進行に伴い寝たきりとなり、配偶者や親族すら認識できない状態となります。このような人間の尊厳を奪う悲惨な疾患であるアルツハイマー病を早期に診断し、的確な予防や治療に発展する研究成果が得られました。

記者発表

1.日  時 平成19年12月7日
2.発表者 福島県立医科大学 医学部 生化学講座

お問い合わせ先

福島県立医科大学 医学部 生化学講座 
連絡先  FAX 024-548-8641