福島県立医科大学 研究成果情報

健常人において緑茶飲用はナドロール血漿中濃度を大きく低下させる(2013-12-30)

論文題名 Green tea ingestion greatly reduces plasma concentrations of nadolol in healthy subjects
健常人において緑茶飲用はナドロール血漿中濃度を大きく低下させる
著  者 三坂 眞元、谷田部淳一、Fabian Müller、高野梢、川邉圭佑、Hartmut Glaeser、谷田部緑、尾上誠良、José P.Werba、渡邉裕司、山田靜雄、Martin F.Fromm、木村純子
雑誌名 Clinical Pharmacology and Therapeutics
発行日 2013年12月
巻(号)、ページ 95(4):432-438;2014
要   旨
緑茶に豊富に含まれるカテキン類は薬物トランスポーターの活性に影響を与えることが報告されている。非選択的βアドレナリン受容体遮断薬のナドロールは薬物トランスポーターの有機アニオン輸送ペプチド(OATP)やP‐糖タンパク質の基質となることがin vitroで示唆されている。本研究では、健常人において緑茶の飲用がナドロールの体内動態および降圧作用に及ぼす影響を検討した。被験者は緑茶または対照として水を2週間飲用し、その後緑茶または水とともにナドロールを服用した。ナドロール投与後48時間まで経時的に採血、脈拍数・血圧測定および蓄尿を行った。ナドロールの血漿中濃度はHPLCを用いて定量し、薬物動態パラメ‐タを算出した。さらにOATP1A2およびOATP2B1を安定発現させたヒト胎児腎由来HEK293細胞においてナドロールの細胞内取り込みを緑茶または主要なカテキンであるエピガロカテキンガレート(EGCG)の存在下で検討した。その結果、緑茶の飲用は水に比べてナドロールの血漿中濃度‐時間曲線下面積を85%低下させた。また、収縮期血圧に対するナドロールの降圧作用は緑茶の飲用によって有意に減弱した。細胞を用いた実験からはナドロールがOATP1A2の基質であることが明らかとなった。加えて、緑茶およびEGCGはOATP1A2によるナドロールの細胞内取り込み輸送を有意に阻害した。以上より、緑茶の飲用はナドロールの血中濃度および降圧作用を減少させること、またこの相互作用の機序の一つとして、OATP1A2を介したナドロールの小腸への取り込みの阻害が一部関与することが示唆された。