体の中を移動する臓器

首の前側、喉仏の下あたりに甲状腺という臓器があります。蝶が羽を広げたような形をしていて、気管を包み込むようについています。薄く柔らかい臓器のため、注意深く首を触ってみても、かろうじて触れるかどうかという存在です。
この甲状腺、実ははじめからこの位置にあったわけではなく、はじめは舌の根元で元となる構造が作られます。その後、体が形づくられるとともに、舌の根元が首の下方に沈み込んで、所定の位置に落ち着きます。この沈み込みが途中で止まってしまうと、甲状腺は本来の位置に存在しなくなります。この状態を医学的には異所性甲状腺と呼び、位置がずれただけだと機能的には問題がないことが多いです。
このように本来あるはずのところにない、無いはずのところにある、初めてそういった状況に遭遇するととても驚きます。しかし、体が形成される過程を知ることで、なぜこのようなこと起きるのか理解することができます。体の中には臓器が移動した道筋や一度作られてあとに消えてしまった痕跡が色々と残っているので、調べてみるとおもしろいです。

首を上に向けた男性の図で、甲状腺の位置が示されています。

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