福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学雑誌「Oncogene」掲載(平成30年5月オンライン)(2018-05-10)

Glycosylation controls cooperative PECAM-VEGFR2-β3 integrin functions at the endothelial surface for tumor angiogenesis

腫瘍の増大に関わる糖鎖を発見-α2,6シアル酸を標的とした血管新生阻害剤の開発に期待-

北爪 しのぶ (きたづめ・しのぶ)
新医療系学部設置準備室 教授
        
研究グループ
【福島県立医科大学】北爪しのぶ、本多たかし 【理化学研究所】今牧理恵、小川加寿子、木塚康彦、小見悠介、小嶋聡一、谷口直之 【高知大学】本家孝一、小谷典弘

概要

論文掲載雑誌:「Oncogene」(2018 May.2 online)

 

 本学・新医療系学部設置準備室の北爪しのぶ教授(理化学研究所兼任)、看護学部生命科学部門の本多たかし教授らと理化学研究所・疾患糖鎖研究チームの今牧理恵テクニカルスタッフ、谷口直之チームリーダーらの共同研究グループは、マウスを用いて、血管内皮細胞表面(細胞膜)に発現する接着分子PECAMが持つ糖タンパク「α2,6-シアル酸」が、腫瘍の血管新生を調節していることを発見しました。

 腫瘍は、一般的に血管内皮増殖因子(VEGF)を放出するため、腫瘍内部に新たな血管が作られ、酸素や栄養分を得た腫瘍がさらに増大することが知られています。そのため、腫瘍の兵糧攻めを狙い、VEGFとその受容体を標的とした血管新生阻害剤が抗がん剤として開発されています。しかし、期待ほどの効果が得られないことが多く、より効果的な薬剤開発のために腫瘍血管新生に対する理解を深めることが重要と考えられています。

 今回、共同研究グループは、α2,6-シアル酸を欠損したマウスを用いて、そのマウスと野生型マウスに腫瘍細胞を移植し、その後の腫瘍のサイズや腫瘍内の血管新生について調べました。その結果、欠損マウスでは腫瘍の増殖が野生型マウスと比べて明らかに減退していること、さらに欠損マウスでは腫瘍内部の血管内皮細胞の多くが死んでいることが分かりました。本来PECAMは、α2,6-シアル酸に結合することで細胞同士を接着させると同時に、他の細胞膜上のシグナル分子と機能的複合体を形成して生存シグナルを伝えています。しかし、α2,6-シアル酸が欠損すると細胞表面にとどまれず、結果的に複合体成分が異常なシグナルを伝えることで、血管内皮細胞が死にやすくなることが明らかになりました。

 現在、α2,6-シアル酸を模倣した低分子化合物のスクリーニング中であり、将来的にPECAMの相互的結合を阻害するような選択的化合物を得られれば、新たな血管新生阻害剤の候補になると期待できます。

 本成果は、英国の科学雑誌『Oncogene』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(5月2日付け)に掲載されました。

 

詳細及び各お問合せについては、下記のプレスリリースをご覧ください。

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 新医療系学部設置準備室 教授

北爪 しのぶ

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