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平成26年度 大学院入学式 学長式辞  (平成26年10月1日)

 

本日、福島県立医科大学大学院に入学を許可されました諸君、誠におめでとうございます。

本学は今、原発事故という 過去に例をみない、惨禍との斗(たたか)いの最前線に立っています。そこでは、県民、国民、そして人類の健康問題に、国内外の支援を得て、一丸となって取り組んでいます。
先人の叡智は、困難に直面した時 それを「悪いこと」とは嘆かず 「自らを鍛える良い機会」と捉えてその困難と斗うことの大切さを説いています。
君達は、自分の価値観に基づき、覚悟を持って今ここに居るのだと私は確信しています。

入学式とは「未来への覚悟」を 表明する場です。
君達は、医療人として史上初めての原発事故に遭遇して、人類が まだ誰も踏み入れたことのない取り組みに、何らかの形で関わっていくという覚悟を持って、この入学式に臨んでいると思います。
今日、新たな一歩を踏み出した君達、本学での出会いを 大切にしてください。 「遇(あ)うて空しく過ぐる勿れ」です。 人生は出会いに尽きます。何故なら、“人生の扉は 他人が開く”からです。
どの出会いが自分にとって大切かは、その時は分かりません。だからこそ、すべての出会いに 真摯に向き合うことです。出会いは、自分を成長させ、そして、人生を豊かにしてくれます。 「出会い」に、運命的な出会いなどというものはなく、出会った後に、お互いが相手に信頼と敬意を持って接する、 長い日々の営みの積み重ねが絆をつくり、その結果が 「掛け替えのない友や恩師」 を作っていくのです。

人間というものは、人生が配ってくれたカードでやっていくもので、配られたカードが悪いと愚痴をこぼしたりするものではありません。人生こうしようああしようと、計画を立てて自分の人生を考えても、その通りになることはありません。 殆ど違った方向へ行ってしまいます。
でも大切なことは、その場その場で自分のベストを尽くすことです。

私の医師としての経験から“世の中には変わるものも多いが、変わらないものも少なくない”というのが実感です。
その中から、君達に三つの言葉を 贈ります。

一つは 「修業とは矛盾に耐えること」です。
それに耐えられなければ、 医療のプロとして一人前にはなれません。「修業」の場では、多少の矛盾や不条理に耐えていくことが求められます。修業や人生とは 「さまざまな厄介ごとの中を 折り合いをつけて生き抜いていく場」という認識と、覚悟を持って歩んでください。
先輩や教師は、君達がひたむきに 努力している姿をみると、君達を愛しく思い、教え育もうという熱意を持てるのです。 「風を待っている軒下の風鈴」では、決して鍛えられません。 双方の熱意がぶつかり合って初めて 「人生の扉は他人が開く」 という言葉が、君達の前に顕(あらわ)れるのです。

もう一つは、「愚直なる継続」です。
これを実行するには 鉄のような意志が必要です。何でもよいですから、毎日継続出来るものを決めて取り組んでみてください。 「愚直なる継続」は、他人とではなく、自分との斗いです。 愚直なる継続を貫くには、時には心に鎧を着せて学ぶことも求められます。

最後に 「自ら枠を作らないこと」です。
自分で自分の将来像を勝手に決めると、それ以上は自分の能力を発揮できません。 高い目標を先(ま)ず設定して、それを達成するために、自分に出来る全ての努力をそこに集中することです。 枠は作るものではなく、結果として出来るものです。

医療の現場では、 寝ている人間を起こしたり、座っている人間を立たせる程の時間は誰も持っていません。
「人生は短いのではなく、 実はその多くを浪費しているのだ」という古人の箴言(しんげん)を胸に刻んで学びの日々を送ってください。

今、本学は、原発事故に対して国民や県民の健康を護(まも)り、我々が得た知見を世界に発信していくという、新たな歴史的使命を負っています。
君達の、そして福島県立医科大学の歴史的な使命に、新たな頁(ページ)を書き足すのは君達自身なのです。 大きな可能性を秘めた君達の、今日からの精進を期待しています。

 

 

平成26年 10月 1日
福島県立医科大学 学長  菊地 臣一


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