
- 中嶋 正太郎 (なかじま・しょうたろう)
- 癌集学的治療地域支援講座・消化管外科学講座 准教授

- 金田 晃尚(かねた・あきなお)
- 医学部 消化管外科学講座 助教

- 河野 浩二(こうの・こうじ)
- 医学部 消化管外科学講座 主任教授
- 研究グループ
- 中嶋正太郎、金田晃尚、岡山洋和、齋藤勝治、菊池智宏、遠藤英成、松本拓朗、深井智司、佐久間芽衣、佐藤孝洋、三村耕作、齋藤元伸、佐瀬善一郎、坂本渉、小野澤寿志、門馬智之、河野浩二
概要
論文掲載雑誌:「Cancers」(令和5年5月18日)
腫瘍細胞内cGAS-STING経路は腫瘍微小環境の免疫細胞の活性化に関与することが報告されており、大腸癌において抗腫瘍免疫応答を活性化する上で重要な因子であると考えられています。ミスマッチ修復機能正常/マイクロサテライト安定性(pMMR/MSS)大腸癌は大腸癌全体の80-85%を占めますが、ミスマッチ修復機能欠損/マイクロサテライト不安定性(dMMR/MSI-H)大腸癌に比べ免疫原性に乏しく、細胞傷害性T細胞(CD8+T細胞)の浸潤度合いが低いことが知られており、PD-L1/PD-1などの免疫チェックポイント分子を標的とした免疫治療が奏功しづらいことが報告されています。しかしpMMR/MSS大腸癌の中でも一部の患者ではCD8+T細胞浸潤度合いが高い腫瘍が存在することも報告されていることから、本研究ではpMMR/MSS大腸癌における腫瘍細胞内cGAS-STING発現パターンやそれらの発現が腫瘍免疫や臨床転機に及ぼす影響に関し検討を行いました。当科において手術が施行された大腸癌患者243症例の免疫組織化学染色(IHC)を実施した結果、pMMR/MSS大腸癌全体の56.8%もの症例において腫瘍細胞内cGAS-STINGの発現が見られないこと、またcGAS、STINGどちらか一方でも発現が見られない症例は90.1%にのぼることが明らかとなりました。特にpMMR/MSS大腸癌における腫瘍細胞内cGAS-STINGの発現低下は進行した大腸癌において顕著に観察され、STINGの発現低下にはDNAメチル化が関与する可能性を見出しました。同様の症例においてCD8のIHCを実施した結果、腫瘍細胞内cGAS-STING発現レベルがCD8+T細胞の浸潤度合いと正に相関していたことから、pMMR/MSS大腸癌におけるCD8+T細胞の低浸潤に腫瘍細胞内cGAS-STING発現低下が関与していることが明らかとなりました。また腫瘍細胞内cGAS発現レベルが低い患者では、再発のリスクが高いことも明らかとなりました。今後は腫瘍細胞内cGAS-STING発現を標的とした新規治療戦略の確立や免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を予測するバイオマーカーとしての可能性をさらに追求していく予定です。
関連サイト
- 論文
https://doi.org/10.3390/cancers15102826
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 癌集学的治療地域支援講座/医学部 消化管外科学講座
電話:024-547-1111
FAX:024-547-1980
講座ホームページ:http://www.gi-t-surg.com/
メールアドレス:gi-tsurg@fm u.a c.jp(スパムメール防止のため、全角やスペースを含む表記をしています)