- 佐藤 孝洋(さとう・たかひろ)
- 医学部 消化管外科学講座 大学院生
- 齋藤 元伸(さいとう・もとのぶ)
- 医学部 消化管外科学講座 講師
- 河野 浩二(こうの・こうじ)
- 医学部 消化管外科学講座 主任教授
- 研究グループ
- 佐藤孝洋、齋藤元伸、中嶋正太郎、齋藤勝治、片方雅紀、深井智司、岡山洋和、坂本渉、佐瀬善一郎、門馬智之、三村耕作、河野浩二
概要
論文掲載雑誌:「Gastric Cancer」(令和5年2月22日オンライン)
AT-rich interactive domain 1A (ARID1A)遺伝子はクロマチンの再構成を担うがん抑制遺伝子であり、胃癌において約30%に失活型変異を認めます。ARID1A欠損はPI3K/AKT経路の活性化を誘導して細胞増殖を促しますが、胃癌に対するAKT阻害薬の治療効果は臨床試験では有効性は示されていません。今回我々はAKT阻害薬の治療効果を改善するべく、ARID1A欠損胃癌細胞を用いて、AKT阻害薬の細胞増殖抑制効果の検討をおこないました。その結果、ARID1A欠損胃癌細胞にAKT阻害薬を投与したところ、ARID1A欠損/HER2陰性細胞は細胞増殖が抑制される一方で、ARID1A欠損/HER2陽性細胞では細胞増殖を抑制できませんでした。一般的に、HER2陽性細胞ではPI3K/AKT経路およびMAPK経路が共に活性化して細胞増殖が促されていることが知られています。公共データベースを用いて検討したところ、HER2陽性胃癌はHER2陰性胃癌と比べてPI3K/AKT経路の活性が低いことがわかりました。実際、HER2陽性胃癌細胞ではAKT阻害薬よりもMAPK阻害薬の細胞増殖抑制効果が高く、MAPK経路に細胞増殖が依存していることが明らかとなりました。本研究は、ARID1A欠損/HER2陰性胃癌においてAKT阻害薬が高い治療効果を示す可能性があることを見出した世界で初めての報告になります。臨床現場において遺伝子プロファイリング検査が普及してきていることから、今後は遺伝子変異に基づいた治療法の選択に本研究が寄与することが大いに期待されます。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
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FAX:024-547-1980
講座ホームページ:http://www.gi-t-surg.com/
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