福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Scientific Reports」掲載(令和4年12月9日オンライン)(2022-12-22)

Evaluation of a quantitative PCR based method for chimerism analysis of Japanese donor/ recipient pairs

定量PCR法を用いた日本人ドナー/レシピエント集団でのキメリズム解析法の評価

皆川 敬治(みなかわ・けいじ)
附属病院 輸血・移植免疫部 副主任医療技師

池田 和彦(いけだ・かずひこ)
医学部 輸血・移植免疫学講座 主任教授

        
研究グループ
皆川敬治1、小野智1、渡邉万央1、佐藤友香2、鈴木沙樹1、 小田原聖1、川畑絹代1、植田航希1,2、Kenneth E. Nollet2、 佐野秀樹3、 池添隆之4、 菊田敦3、 池田和彦1,2
1)福島県立医科大学附属病院 輸血・移植免疫部
2)福島県立医科大学医学部 輸血・移植免疫学講座
3)福島県立医科大学附属病院 小児腫瘍内科
4)福島県立医科大学医学部 血液内科学講座

概要

論文掲載雑誌:「Scientific Reports」(令和4年12月9日オンライン)


 キメリズム解析は、造血幹細胞移植後のレシピエント造血細胞とドナー造血細胞の割合を評価するものです。この検査は、ドナー造血細胞の生着確認や移植片拒絶の判断に不可欠であり、疾患再発の早期発見にも重要です。従来、STR (short tandem repeat)-PCR法などがキメリズム解析に使用されてきましたが、レシピエント造血細胞の検出感度や検査の標準化が不十分でした。この対策として、個人間における遺伝子の挿入/欠失の相違を、定量PCRを用いて検出するKMRキットが開発され(GenDx社、オランダ)、標準検査試薬として期待されています。しかし、日本人集団においては遺伝的背景が開発に用いられた集団と異なることが考えられました。そのため、我々はKMRキットについて、日本人集団での評価検討を行いました。

 KMRキットでは日本人集団においてもほとんどのペアについてドナーとレシピエントの識別が可能であることが分かりました。また、KMRキットによるレシピエント造血細胞比率は正確で、従来法のSTR-PCRよりも高感度かつ高い特異性をもって評価することができました。

 この研究によってKMRキットを用いたキメリズム解析は、日本人集団においても造血幹細胞移植後のレシピエントの状態を評価するための高感度かつ標準化された有益な評価方法であることが示されました。


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 輸血・移植免疫学講座

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