福島県立医科大学 研究成果情報

第5回日本腫瘍循環器学会学術集会 若手研究奨励賞(基礎)最優秀演題賞(令和4年9月受賞)(2022-11-28)

心筋梗塞による Nerve Growth Factor の増加は NGF/TrkA 経路を介して乳がんを進行させる

心筋梗塞による Nerve Growth Factor の増加は NGF/TrkA 経路を介して乳がんを進行させる

谷 哲矢 (たに・てつや)
医学部 循環器内科学講座 助手
        
研究グループ
谷哲矢、及川雅啓、三阪智史、石田隆史、竹石恭知

今回の受賞について

日本腫瘍循環器学会


 がんと循環器の両者が重なった領域を扱う新しい臨床研究分野を腫瘍循環器学(Onco­-Cardiology)と定義し、がん患者における循環器疾患の治療並びに心血管系副作用に対する最善の医療の確立へ向けた研究調査、知識の普及、啓発、学術集会の開催を行うことで学術を進歩向上させ、がん治療の適正化と質の向上を図り、広く医学の発展と国民の健康増進に寄与することを目的としている。学術集会は、年1回開催されている。

 

賞について


 40歳未満の日本腫瘍循環器学会の会員を対象に、一般演題より優秀な演題が若手研究奨励賞(基礎)に選出される。講演により厳正な審査のうえ、選考される。

概要

 近年、慢性心不全患者ではがん発生率が増加することや、心筋梗塞後の心不全患者は心筋梗塞後の非心不全患者と比較してがんの発症率が高いことが報告されている。また神経成長因子(Nerve Growth Factor, NGF)は、乳がん細胞増殖や心筋梗塞後の交感神経リモデリングに重要な役割を果たしている。我々は 4T1 細胞( Balb/c マウス由来乳がん細胞)を用いて、NGF 刺激が NGF 受容体である TrkA リン酸化を亢進し、増殖マーカーである Ki67 陽性細胞を増加させることを確認した。Balb/c雌マウスに心筋梗塞を作成し、2週後に 4T1 細胞を皮下接種し、担がん心筋梗塞マウスモデルを作成した。 4T1 細胞接種時の血清 NGF 濃度は心筋梗塞群でシャム群より上昇していた。 4T1 細胞接種3週後の腫瘍容積は心筋梗塞群でシャム群より増大していた。がん組織における TrkA のリン酸化、がん細胞に占めるKi67 陽性細胞の割合は心筋梗塞群でシャム群より増加していた。 siRNA を用いて TrkA をノックダウンした 4T1 細胞では、 NGF 刺激による Ki67 陽性細胞増加は抑制され、 TrkA 阻害薬を投与した担がん心筋梗塞マウスモデルでは、がん組織における Ki67 陽性細胞の割合は、プラセボ投与群に比し低下していた。心筋梗塞後の乳がん組織増大に   NGF/TrkA 経路が関与していることを明らかにした。


関連サイト

連絡先

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