福島県立医科大学 研究成果情報

スイス科学誌「Frontiers in Immunology」掲載(令和4年8月16日オンライン)(2022-11-25)

The complex formation of MASP-3 with pattern recognition molecules of the lectin complement pathway retains MASP-3 in the circulation

MASP-3の補体レクチン経路認識分子との複合体形成は、MASP-3の循環血液中での長期保持に関与する

草刈 浩平 (くさかり・こうへい)
医学部 免疫学講座 MD-PhD学生
        
研究グループ
草刈浩平1、町田豪1、石田由美1、大森智子1、鈴木俊幸2、関亦正幸2、和田郁夫3、藤田禎三4、関根英治1
1福島県立医科大学・免疫学講座、2福島県立医科大学・放射性同位元素研究施設、3福島県立医科大学・細胞科学研究部門、4福島県立総合衛生学院

概要

論文掲載雑誌:「Frontiers in Immunology」(令和4年8月16日オンライン)


 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 免疫学講座 草刈浩平MD-PhDコース学生(医学部5年)、石田由美専門医療技師、町田豪講師、関根英治教授らは、自然免疫機構の1つである補体系に関する研究で、補体因子MASP-3がレクチン経路の認識分子と複合体を形成することの免疫学的意義を明らかにしました。

 補体系は30種類以上の補体因子とよばれるタンパク質で構成される生体防御機構の1つです。補体系は、古典経路、レクチン経路、第二経路のいずれかの活性化経路を通じて活性化され、その結果、C3などの補体因子は病原体に結合することで好中球やマクロファージといった食細胞による貪食の効率を高め、さらに膜侵襲複合体を形成することで病原体を直接破壊し排除します。

 これまで我々の研究グループでは、Masp1遺伝子から転写される2つのセリンプロテアーゼMASP-1とMASP-3について、補体因子としての役割を明らかにしてきました。MASP-1は、病原微生物などの糖鎖を認識するレクチン経路の認識分子と複合体を形成することでレクチン経路の活性化に作用し、MASP-3は第二経路のD因子を活性化することで第二経路の活性化に作用します。しかし、なぜMASP-3がMASP-1と同様にレクチン経路の認識分子と複合体を形成するのか、その免疫学的意義は不明でした。

 本研究では、レクチン経路の認識分子と複合体を形成できない変異型MASP-3と野生型MASP-3を作成し、マウス投与後の循環血液中での活性化動態とクリアランス動態を比較検討しました。その結果、変異型MASP-3は循環中で維持されず、野生型MASP-3よりも早期に生体内からクリアランスされることが明らかになりました。以上から、MASP-3はレクチン経路の認識分子と複合体を形成することで生体内で維持され、第二経路の活性化能の恒常性に貢献していることが推測されました。

 本研究の成果は、補体系の活性化機構や恒常性の全容解明、さらに補体系が関与する疾患の病態解明やMASP-3を標的とした治療薬の開発に貢献するものと考えられます。


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 免疫学講座

電話:024-547-1148

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