福島県立医科大学 研究成果情報

ヨーロッパ肝臓学会雑誌「JHEP Reports」掲載(令和4年7月)(2022-09-08)

Circulating complement factor H levels are associated with disease severity and relapse in autoimmune hepatitis

血中補体H因子濃度は自己免疫性肝炎の重症度および再燃と関連している

林 学 (はやし・まなぶ)
医学部 消化器内科学講座 助教
        
研究グループ
林学1, 阿部和道1, 藤田将史1, 高橋敦史1, 関根英治2, 大平弘正 1
1: 福島県立医科大学 消化器内科学講座
2: 福島県立医科大学 免疫学講座

概要

論文掲載雑誌:「JHEP Reports」(令和4年7月)


 自己免疫性肝炎は自己免疫機序により肝障害を来し重症化することや肝障害が再燃することがある肝疾患ですが、病気の状態の予測や治療が難しいため障害機序の解明や病気の予測方法が必要とされています。

 補体系は、体内に侵入した病原微生物に対して活性化することで補体成分を結合し、病原微生物を「異物」として標識(オプソニン化)します。その結果、好中球やマクロファージといった食細胞は、病原微生物を効率よく貪食処理できるようになり、さらに補体系は補体成分の結合をきっかけに、病原体を直接破壊します。補体系で最も重要な補体因子であるC3が活性化すると、白血球を刺激するC3aと、病原体をオプソニン化するC3bが産生されます。一方、H因子はC3の活性化を抑制します。これまでに、補体の過剰な活性化は様々な臓器障害に関連していることが報告されていますが、自己免疫性肝炎と補体系の関連は分かっていませんでした。

 本研究では自己免疫性肝炎の患者さんの血液中の補体因子であるC3aやH因子を測定し、疾患の重症度や再燃との関連を解析しました。その結果、補体の活性化を示すC3aが高値であり、H因子濃度は自己免疫性肝炎の重症度が高いほど低値であることがわかりました。さらにH因子が低い患者さんでは再燃が起こりやすい傾向がありました。これらのことから自己免疫性肝炎の障害機序には補体系が関与していること、重症度や再燃にはH因子濃度が関連していることが示されました。本研究の結果から、補体因子に着目した自己免疫性肝炎の病気の状態の予測方法や、新たな治療方法の開発に繋がることが期待されます。


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