- 鈴木 聡 (すずき・さとし)
- 放射線医学県民健康管理センター 甲状腺検査業務室 副室長
- 研究グループ
- Satoshi Suzuki, Satoru Suzuki, Manabu Iwadate, Takashi Matsuzuka, Hiroki Shimura, Tetsuya Ohira, Fumihiko Furuya, Shinichi Suzuki, Seiji Yasumura, Susumu Yokoya, Hitoshi Ohto, Kenji Kamiya
概要
論文掲載雑誌:「Thyroid」掲載(令和4年9月6日)
【背景】
甲状腺ホルモン(以下fT3とfT4)は、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(以下TSH)により分泌を促されます。この関係はフィードバック機構というもので調整され、甲状腺ホルモンが一定に保たれます。甲状腺ホルモンが多いとTSH分泌が抑えられ、甲状腺ホルモンは少なくなります。逆に甲状腺ホルモンが少ないとTSH分泌が促され、甲状腺ホルモンが多くなります。しかしこのフィードバック機構は生後いつ成熟するのかはよく分かっていません。
私たちは以前、甲状腺結節を認める小児若年者では、TSHが低いことを報告しました。しかし、一般的に成人ではTSHが高いことは甲状腺結節の形成や増大の因子と考えられています。なぜ小児若年者と成人でこのような違いがあるのかを明らかにするために、今回は結節のある方と結節のない方で、それぞれ異なる年代で甲状腺ホルモン値について調べ、小児若年者のホルモン調節の面から検討を行いました。
【対象】
福島県県民健康調査甲状腺検査の検査3回目まで二次検査を受診した4,955人のうち、6歳から20歳の甲状腺結節のない721人と甲状腺結節のある2,849人について、TSH、fT4、fT3、から計算される、甲状腺フィードバック調節程度の指標であるT4FQI、T3FQI(いずれも低くなるほどフィードバック機構がより働いていることになる)について調べました。
【結果】
T4FQIとT3FQIは年齢が進むとともに低下していました。特に、fT3に対するTSH反応の指標であるT3FQIは、女性では約10歳、男性では約15歳以降、急峻に低下し成人の値に近づきました。T3FQIがホルモン調整の指標だとすると、思春期を早く迎える女性のほうがより早く成人の値に近づいたことから、甲状腺ホルモン調節は、小児若年期における性別特有の成熟過程を経て成人の調節に近づくと考えました。また、結節がある場合には、12歳から17歳ではTSH、T4FQI、T3FQIが 同年齢の集団のなかでは低いことが分かりました。
【結論】
小児若年者において、T4FQIとT3FQIは男女共に年齢が進むと低下しており、成長に伴ってフィードバック機構によるホルモン調整が発達してくることが分かりました。また、ホルモン調整が成熟化することと結節の形成には関係がある可能性が示され、小児におけるホルモン調節と結節形成要因との関係性という新たな知見が得られました。
関連サイト
- 論文(掲載誌サイト)
https://doi.org/10.1089/thy.2022.0327
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 甲状腺検査業務室
電話:024-581-5337
FAX:024-547-1244
メールアドレス:satop@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)