福島県立医科大学 研究成果情報

英国科学誌「Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry」掲載(令和4年7月オンライン)(2022-08-30)

Identification of oxytocin expression in human and murine microglia

ヒトおよびマウスミクログリアにおけるオキシトシン発現の同定

前島 裕子(まえじま・ゆうこ)
医学部 病態制御薬理医学講座 特任教授

下村 健寿(しもむら・けんじゅ)
医学部 病態制御薬理医学講座 主任教授

        
研究グループ
前島裕子・山地恵・横田祥子・日出間志寿・西森克彦・小野委成・下村健寿 (病態制御薬理医学講座)
八木沼洋行(神経解剖・発生学講座)
ケネス・ノレット(ふくしま国際医療科学センター・放射線医学県民健康管理センター)
愈志前・富田博秋(東北大学大学院医学研究科精神神経学分野)

概要

論文掲載雑誌:「Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry」(令和4年7月オンライン)


 現代社会はストレス社会と言われており、 心の健康が重視されています。また、神経ペプチドであるオキシトシンは分娩・泌乳を促すホルモンとして発見されましたが、 ストレス軽減作用や自閉症症状改善効果があるとして注目されています。
 一方ミクログリアは脳内に存在する免疫細胞であり、脳内における異物の貪食や不要なシナプスの刈り込み、神経回路の形成などを介して脳内の恒常性を保つのに重要な働きをすることが分かっています。このミクログリアの過剰な炎症は近年神経および精神疾患につながることが分かってきています。そんな中、オキシトシンはミクログリアの炎症を抑制することが報告されています。
 しかし、 ミクログリアに作用するオキシトシンがどこから来るのかは全くわかっていませんでした。今回、 ヒトおよびマウスのミクログリア自体にオキシトシンが発現し分泌されていることを発見し、炎症が起きるとミクログリアでオキシトシンの発現が高まることを明らかにしました。さらにオキシトシンはオートクライン/パラクラインという様式でミクログリアからの炎症性サイトカインの分泌を制御している可能性があることを突き止めました。
 多発性硬化症やアルツハイマー病、 パーキンソン病の病因の一つとしてミクログリアの過剰炎症状態の存在が報告されています。またミクログリアの慢性炎症は自閉症やうつ病とも関係が深いことが分かっています。今回発見したミクログリア-オキシトシンシステムはこれらの神経、精神疾患の機序および治療法の探索に新しい視点を与えることになります。
 本研究では、福島県立医科大学に献体されたご遺体の脳組織を使わせていただきました。


連絡先

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