- 金田 晃尚 (かねた・あきなお)
- 医学部 消化管外科学講座 助手
- 研究グループ
- 金田晃尚、中嶋正太郎、三村耕作、河野浩二
今回の受賞について
癌免疫外科研究会
癌に対する免疫チェックポイント阻害薬は日常臨床で広く用いられるようになった。より安全かつ有効な免疫治療を目指した治療効果予測因子の解明や複合免疫療法の開発、また癌免疫療法の将来展望等について議論する研究会。
賞について
当研究会の発展と症例を目的とし、主題・一般演題から1名ずつが優秀演題として選出されるもの。
概要
ミスマッチ修復欠損(dMMR)/マイクロサテライト不安定(MSI)大腸癌は、ミスマッチ修復欠損のない(pMMR)/マイクロサテライト安定性(MSS)大腸癌と比較して免疫原性が高く、細胞傷害性(CD8+)T細胞の浸潤度合いが高く、予後良好とされる。cyclic GMP-AMP synthase (cGAS) - stimulator of interferon genes (STING)経路は、ウイルスをはじめとする外来DNAに対する重要な自然免疫経路のひとつとして知られていたが、近年、大腸癌を含む様々な癌種において腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答の制御に重要な役割を果たすことが明らかとなってきた。実際に腫瘍細胞におけるcGAS-STING経路の活性化が腫瘍組織へのCD8+T細胞の浸潤に寄与するものと考えられているが、dMMR/MSI大腸癌におけるcGAS-STING経路の役割は十分に解明されていない。
本研究では、公開データセットの大腸癌コホートを用いた解析により、cGAS-STING, CD8, CXCL10, CCL5 (cGAS-STING経路で制御されるCD8+ T細胞走化性因子)の遺伝子発現レベルは、dMMR/MSI大腸癌で有意に上昇していた。また、cGAS-STINGの発現はCD8遺伝子発現と有意に関連していることが示された。大腸癌切除標本283例の臨床検体を用いた免疫組織学的解析では、dMMR大腸癌の腫瘍細胞においてcGAS-STINGが高度に発現しており、また腫瘍細胞でのcGAS-STINGの高発現がCD8+ T細胞数の増加と有意に関連していることが明らかとなった。
以上の結果からdMMR/MSI大腸癌では腫瘍細胞においてcGAS-STING経路の発現が高く維持されており、CD8+ T細胞の浸潤と免疫活性の高い腫瘍微小環境に寄与しているものと考えられた。
関連サイト
- 癌免疫外科研究会
http://www.ganmen.org/
連絡先
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電話:024-547-1111
FAX:024-547-1980
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