福島県立医科大学 研究成果情報

ドイツ学術誌「Cancer Immunology, Immunotherapy」(令和3年10月1日掲載)(2021-11-02)

The clinical significance of tertiary lymphoid structure and its relationship with peripheral blood characteristics in patients with surgically resected non-small cell lung cancer: a single-center, retrospective study

非小細胞肺癌における腫瘍局所三次リンパ様構造の臨床的重要性及び末梢血所見との関連性

福原 光朗 (ふくはら・みつろう)
医学部 呼吸器外科学講座 大学院研究生
        
研究グループ
【呼吸器外科学講座】
Mitsuro Fukuhara, Satoshi Muto, Sha Inomata, Hikaru Yamaguchi, Hayato Mine, Hironori Takagi, Yuki Ozaki, Masayuki Watanabe, Takuya Inoue, Takumi Yamaura, Naoyuki Okabe, Yuki·Matsumura, Takeo Hasegawa, Jun Osugi, Mika Hoshino, Mitsunori Higuchi, Yutaka Shio, Hiroyuki Suzuki.
福原光朗、武藤哲史、猪俣頌、山口光、峯勇人、高木玄教、尾崎有紀、渡部晶之、 井上卓哉、 山浦匠、 岡部直行、 松村勇輝、 長谷川剛生、 大杉純、 星野実加、 樋口光徳、 塩豊、 鈴木弘行

概要

論文掲載雑誌「Cancer Immunology, Immunotherapy」(令和3年10月1日)


腫瘍組織における三次リンパ様構造 (Tertiary lymphoid structures; TLS) の存在は、いくつかの種類の癌において良好な予後に関連する要因であることが報告されています。しかし、TLSの評価には腫瘍組織自体が必要であり、時に難しい場合があります。一方で TLS 形成と末梢血所見との関係はいまだ解明されていません。本研究の目的は、非小細胞肺癌(NSCLC)患者において、TLSの存在が生存率に及ぼす影響を評価するとともに、TLS 形成に関連する末梢血所見の特徴を明らかにすることです。
2013年から 2017年に福島県立医科大学附属病院呼吸器外科で肺切除術を受けた非小細胞肺癌患者147名を対象としました。切除標本の免疫組織化学染色を行いTLSの発現を評価し、臨床パラメ タと転帰の関係を分析しました。さらに術前に採取した末梢血単核細胞(PBMC)をマスサイトメトリーで解析し、TLS陽性患者の微小環境の特徴を明らかにしました。

46人の患者がTLS高発現で、残りの101人の患者は低発現でした。ステージII期からIV期の患者 (n=35)ではTLS高発現群で無病生存期間が有意差を持って長いという結果でした(p=0.027)。末梢血の好中球/リンパ球比(NLR)が2.75未満であることは、TLSの高発現と関連していました (p=0.003) 。マスサイトメトリーアッセイ後のシトラス分析では、TLS高発現群ではPBMCにおけるHLA-DRおよびCD9を発現している細胞の数が少ないという結果でした。

ステージI期のNSCLC患者はTLS発現で予後に差を認めませんでしたが、II期からIV期のNSCLC患者ではTLS高発現群の予後が良好であったという違いを認めました。末梢血所見ではNLR低値であることや抗原提示細胞が少ないことが腫瘍の微小環境にTLSが存在することを示唆する可能性があります。


連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 呼吸器外科学講座

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