
- 長谷川 誠 (はせがわ・まこと)
- 消化管外科学講座 専攻医
- 河野 浩二(こうの・こうじ)
- 消化管外科学講座 教授
- 研究グループ
- 長谷川 誠、河野 浩二
概要
論文掲載雑誌:「Nutrition and Cancer」(August 29, 2024)
【背景】
アナモレリンは本邦で2020年12月に、がん性悪液質の治療薬として承認された。過去の研究ではアナモレリン導入により体重、骨格筋量、食欲の増加、栄養状態の改善効果が示されているが筋力の改善は示されていない。また、アナモレリンとリハビリテーションの併用の効果に関しては、十分な検討が行われていない。さらに、実臨床では早期に内服継続が困難となり効果発現前に中断となる症例にも遭遇する。本研究ではアナモレリン投与を受けるがん悪液質患者に対しリハビリテーションを併用した場合の栄養状態および運動機能に与える影響を検証するとともに、早期内服中断に関連する患者因子を検討した。
【方法】
本研究は単施設の後方視的観察研究として実施した。2021年7月から2023年11月までの期間に竹田綜合病院で新規にアナモレリンを導入したがん悪液質患者を対象とし、12週間のアナモレリン内服継続群と12週以内の中断群で、背景因子を比較した。また内服継続群を対象に導入時と12週後の栄養状態、運動機能(非利き手握力)の変化を評価した。外来リハビリテーションは2週間に1回の頻度で実施し、参加者は個々の身体機能に応じた在宅リハビリテーションを指導されていた。
【結果】
対象は82名(男性:44名、女性38名)で、年齢の中央値は72歳、内服継続群は36名、中断群は46名であった。多変量解析ではPerformance Statusが1 or 2の患者は、0の患者と比較しアナモレリンを12週間継続できる可能性が有意に低いことが示された (odds ratio 2.71; 95% CI 1.05−7.00; p=0.040)。また内服継続群では、12週間後には体重(48.8 to 53.7kg, p<0.001)、骨格筋量(6.4 to 6.9kg/m2, p<0.001)、FAACT (11.5 to 18.0, p<0.001)、非利き手握力(20.5 to 21.7kg, p=0.018)において有意な改善が見られた。
【結論】
アナモレリンとリハビリテーションの併用により開始12週時点での栄養状態及び運動機能の有意な改善が得られた。またPerformance Statusが悪化する前にアナモレリンを導入することが、アナモレリンの内服継続とその効果を十分に享受するために重要である。(長谷川 誠)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
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