福島県立医科大学 研究成果情報

英国雑誌「eClinical Medicine」掲載(令和6年8月26日オンライン)(2024-10-10)

Detection of thyroid cancer among children and adolescents in Fukushima, Japan: a population-based cohort study of the Fukushima Health Management Survey

福島の小児および青少年における甲状腺がんの発見:福島県「県民健康調査」における地域集団コホート研究

高橋 秀人 (たかはし・ひでと)
福島県立医科大学特任教授
        
研究グループ
Hideto Takahashi, Seiji Yasumura, Kunihiko Takahashi, Tetsuya Ohira, Hiroki Shimura, Hitoshi Ohto, Satoru Suzuki, Shinichi Suzuki, Tetsuo Ishikawa, Satoshi Suzuki, Enbo Ma, Masanori Nagao, Susumu Yokoya, and Kenji Kamiya

概要

論文掲載雑誌:「eClinical Medicine」(August 26, 2024)


本研究は「コホート研究」であり, 対象者は 253,346人(データA)と, 特にその中で外部被ばく線量のデータが欠損でない113,120人(データB)としました.

主要評価項目は, 甲状腺がんまたは疑いの発見であり, 外部被ばく線量1[mSv]以上と1[mSv]未満のそれぞれにおける発見率の比を発見率比としました.この発見率比について, 性別, 年齢, 地区, 過体重状態について(モデル1), あるいはこれらに加えて, 過去の病歴, 甲状腺がんの家族歴, 魚介類の摂取頻度, 海藻類の摂取頻度(モデル2)を調整し(ほぼ比較可能となるように均し),データAとデータBのそれぞれにおいて比較しました. データAの外部被ばく線量の欠損データは, 被検者の居住地区における線量の中央値を推定値として用いました.

検査2回目と3回目で, 合計97人の甲状腺がんまたはその疑いが発見され, 発見率は100万人年あたり10.3人(95%信頼区間:8.5-12.6)となりました. 甲状腺がん発見率比(および95%信頼区間)は,それぞれデータAのモデル1で1.6 (0.7-3.4), モデル2で1.6 (0.7-3.5), データBのモデル1で1.7 (0.7-3.8), モデル2で1.7 (0.7-3.8)であり, 外部被ばく線量(1mSv以上)の方がやや高いものの, 有意となる大きな差には至りませんでした(測定等の誤差の範囲内にあり, 差があるということではないという結果を得ました). 本研究により, 追跡期間平均3.7年現在, 全体の99.9%以上が5mSv未満である低線量放射線被ばくについて, 甲状腺がん発見との間に(意味のある)関連はないことが示されております.

(本研究の意義)

本研究では,全対象者の99.9%以上が5mSv未満という超低線量被ばくと, 甲状腺がん発見について有意な関連性は認められませんでした(平均3.7年の追跡期間). いくつかの制限はあるものの, 私たちの知る限りでは, これは超低線量被ばくの影響について, コホートデザインを用いて結果を得た最初の研究です。

キーワード 福島県「県民健康調査」, 甲状腺検査, コホート研究, 発見率


連絡先

安村誠司

福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター

電話:024-547-1243

メールアドレス:kenkan@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため一部全角表記しています)