
- 遠藤 芽依 (えんどう・めい)
- 総合内科・総合診療医センター 助手
- 研究グループ
- 遠藤芽依、鋪野紀好、マハム・スタンヨン、中村光輝、豊田喜弘、菅家智史
今回の受賞について
【日本医学教育学会】
医学教育に興味関心を持ち、医学教育に関して学びたい人のためにある学会であり、よりよい医学教育について社会に発信することを存在意義としている学会。
第56回の日本医学教育学会は「ダイバーシティ&インクルージョン~すべての人が輝ける医療者教育~」がテーマとして定められた。
【賞について】
医学教育の研究を推進している若手の研究者を奨励する賞であり、日本医学に関する優れた研究を行っているものに授与される。
概要
患者中心の医療(Patient-centered care:PCC)は、多職種協働の実践に効果的に従事できる実践者を養成するために、世界的に医学教育に取り入れられてきた。健康の社会的決定要因(SDH)の視点を含めた患者背景の理解は、PCC要素において重要であるが、健康の社会的側面の理解は、臨床現場で問題を抱えた患者に遭遇する経験を通して得られるという報告があり、講義で教育が実施されているという報告は少ない。また、患者背景について医師だけが講義で教えることには限界がある。
そこで、医師と医療ソーシャルワーカー(MSW)による医学生を対象としたPCCに関する協同教育の教育効果を明らかにすることとした。
福島県立医科大学の医学部4年生137名を対象とした混合方法研究を実施した。医師とMSWの協同のファシリテートによる、講義、複雑な社会的ニーズを持つ患者のケーススタディ、ロールプレイを取り入れた教育をデザインした。量的データは、PCCに関する習熟度の変化を測定するために、5段階リッカート尺度を用いたセッション前後のアンケートによって収集した。質的分析では、これらの変化の背後にあるプロセスを探るために、フォーカスグループインタビューを実施し、理論的飽和に達するまでインタビューを繰り返した。2人の独立したコーダーがデータを分析した。
本研究に参加した123名の学生において、PCCを説明する能力(3.3±0.9→4.1±0.7、効果量0. 859)、患者の健康、病気、疾患に関する経験に耳を傾けること(3.4±1.0→4.3±0.6、効果量0.893)、患者の背景に関する情報を収集すること(3.3±1.0→4.3±0.6、効果量0.909)の項目に著明な改善がみられ、すべての項目でp値<0.001を示した。内容分析の結果、「患者の背景の理解」(n=80)、「MSWからの理解と支援」(n=32)、「ロールプレイと共感性の発達」(n=22)など、9つのサブカテゴリーが同定された。
患者の背景の理解、共感性の育成、多職種との協力の促進において改善が認められたことから、このような協同教育を医学教育に取り入れることの重要性が強調された。(遠藤 芽依)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部/看護学部 総合内科・総合診療学講座
電話:(大学代表024-547-1111(代) 講座024-547-1516)
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