- 吉田 周平 (よしだ・しゅうへい)
- リウマチ膠原病内科学講座 助手
- 研究グループ
- ○福島県立医科大学医学部リウマチ膠原病内科学講座
吉田 周平、藤田 雄也、住近 祐哉、松本 聖生
齋藤 賢司、佐藤 秀三、浅野 智之、小早川 雅男
大平 弘正、右田 清志
○長崎大学医学部第一内科 古賀 智裕
○長崎医療センター 八橋 弘
〇国立国際医療研究センター国府台病院 溝上 雅史、杉山 真也
概要
論文掲載雑誌:「Frontiers in Immunology」(April 22, 2024)
成人発症スティル病(AOSD)は、特徴的な皮疹、発熱、関節炎、喉の痛み、リンパ節腫脹、肝脾腫を特徴とする全身性自己炎症性疾患です。AOSDの病態生理には、サイトカイン調節異常を伴う自己炎症が関与していることが示唆されています。mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)は、ガレクチン-3(Gal-3)のリガンドとして分泌される、高度に糖鎖修飾された糖蛋白質です。M2BPGiは炎症過程に寄与しているという仮説があり、いくつかの慢性炎症性疾患において上昇しています。また、Gal-3は単球やマクロファージなどの免疫細胞を活性化することが推測されており、上皮細胞関連Gal-3が様々な自然免疫細胞を活性化し、炎症性サイトカインを産生することも証明されています。インターロイキン(IL)-1、IL-6、およびIL-18といったサイトカインはAOSD患者の炎症状態に関与していますが、活動性のAOSD患者におけるガレクチンとサイトカインの関係は不明なままです。本研究では、日本人AOSD患者において、循環中のサイトカイン/ケモカインとGal-3、およびそのリガンドであるM2BPGiとの関係を検討しました。
山口基準に従ってAOSDと診断された患者44人、疾患対照として関節リウマチ(RA)患者50人、および健常人27人を対象としました。血清M2BPGi濃度は、HISCL M2BPGi試薬キットと自動免疫分析装置(HISCL-5000)を用いて、血清Gal-3濃度をELISA法を用いて測定しました。69種類の血清サイトカイン/ケモカインの血清中濃度を、マルチ懸濁サイトカインアレイを用いて解析しました。また、特定の分子ネットワークを同定するために、AOSD患者で発現している各サイトカインのクラスター解析を行いました。
AOSD患者の血清中Gal-3およびM2BPGi濃度は、RA患者および健常人と比較して有意な増加が認められました(いずれもp < 0.001)。血清Gal-3濃度とAOSD疾患活動性スコア(Pouchotスコア、r=0.66、p < 0.001)および血清フェリチン濃度との間には有意な正の相関が認められました。しかし、血清M2BPGi値とAOSD疾患活動性スコア(Pouchotスコア、r=0.32、p=0.06)および血清フェリチン値との間には有意な相関は認められませんでした。さらに、AOSD患者において、Gal-3の血清レベルとIL-18を含む様々な炎症性サイトカインとの間に有意な相関が観察されました。AOSD患者における免疫抑制療法は、血清Gal-3およびM2BPGiレベルを有意に低下させました(それぞれ、p = 0.03および0.004)。
今回の研究ではAOSD患者ではGal-3とM2BPGiの両方が上昇しており、免疫抑制治療によって低下することを証明しました。また、Gal-3のみがPouchotスコアやフェリチンの血清レベルなどの疾患活動性、炎症性サイトカインと有意に相関しており、AOSDの疾患活動性を予測する有用なバイオマーカーとなりうると考えられました。(吉田 周平)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部/リウマチ膠原病内科学講座
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