福島県立医科大学 研究成果情報

米国科学誌「Community Mental Health Journal」(令和6年2月3日掲載)(2024-05-10)

Post-Disaster Community Transition of Psychiatric Inpatients: Lessons from the Fukushima Nuclear Accident

精神科入院患者の被災後の地域移行:福島原発事故からの教訓

本間(照井) 稔宏 (ほんま(てるい)・としひろ)
医学部神経精神医学講座 併任助教
        
研究グループ
〈社会精神保健チーム(Social Psychiatry and Mental Health: SPMH Lab.)〉
本間(照井)稔宏1、國井泰人2、星野大1、各務竹康3、日高友郎3、福島哲仁3、安西信雄4、後藤大介1、三浦至1、
矢部博興1
1. 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座
2. 東北大学災害科学国際研究所・災害精神医学分野
3. 福島県立医科大学医学部衛生学・予防医学講座
4. 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科

概要

論文掲載雑誌:「Community Mental Health Journal」(February 3, 2024)


福島県では、福島第一原子力発電所事故に伴い大規模広域避難転院を余儀なくされた県内精神科病院入院患者様に対して、福島への帰還や地域移行を目指した「精神科病院入院患者地域移行マッチング事業」を実施しました。避難後に限らず、精神科的・身体的背景が地域移行の可否にどのように影響しているかに関する報告はこれまで乏しいのが現状でした。したがって本研究では、原発事故による精神科避難転院患者様の避難後地域移行の可否とその背景を検討することを目的としました。

主要評価項目を地域移行の達成/非達成とし、精神科診断や身体合併症など背景要因との関連を確認する探索的分析を行いました。その結果、精神科診断ではいわゆる統合失調症圏の障害が地域移行非達成の傾向を示しました。被災前から持続する難治の精神症状から元来地域移行が困難であった可能性や、陰性症状から意思表示が困難であった可能性が示唆されました。身体合併症については、循環器系疾患および消化器系疾患が、地域移行非達成の傾向を示しました。甚大な災害禍でのこれらの疾患の発症やその増悪、さらに避難先での疾患コントロールの困難等が生じた可能性が考えられました。

これらの結果を踏まえ、今後はこうした患者様の災害脆弱性が如何なるものか、さらには望ましい介入やアドヴォカシーはどのようなものであるかを再考する必要があります。(本間(照井)稔宏)


連絡先

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 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 神経精神医学講座 本間(照井)稔宏

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