- 佐藤 志帆 (さとう・しほ)
- 放射線医学県民健康管理センター 助教
- 研究グループ
- Shiho Sato,Tetsuya Ohira,Fumikazu Hayashi,Hironori Nakano,
Masanori Nagao,Kanako Okazaki,Michio Shimabukuro,Akira Sakai,
Junichiro Kazama,Mitsuaki Hosoya,Atsushi Takahashi,Masaharu Maeda,
Hirooki Yabe,Itaru Miura,Syuntaro Itagaki,Seiji Yasumura,Hitoshi Ohto, Kenji Kamiya
概要
論文掲載雑誌「International Journal of Disaster Risk Reduction」(令和5年11月19日)
大規模災害後では、災害直後から循環器疾患(cardiovascular disease: CVD)の発症が増えます。特に原発事故などで避難生活が長引く場合には、そのリスクが長期間にわたって継続します。AFHCHDC7リスクスコアは、災害後のCVD発症リスクを予測するスコアであり、血液検査や尿検査が不要な災害時ツールです。しかしこのスコアは短期的なCVDリスクを予測するものであり、長期的なCVDリスクの予測については評価されていません。そこで私たちは、AFHCHDC7リスクスコアの長期的な災害後CVD発症リスクの予測性能を評価し、日常の診療などで利用される吹田CVDリスクスコアとの比較を行いました。解析対象者は、福島県「県民健康調査」において2011年に「健康診査」を受診かつ「こころの健康度・生活習慣に関する調査」に回答したCVD既往歴のない30~79歳の14,779人としました(追跡期間6年間)。循環器疾患(心筋梗塞と脳卒中)発症をアウトカムとし、居住地域、性別、年齢、AFHCHDC7リスクスコア項目、吹田CVDリスクスコア項目などの情報を抽出し、ロジスティック回帰分析にて循環器疾患の発症予測モデルを構築しました。予測モデルの性能評価には、Area Under Curve(AUC)という指標を用いました。吹田CVDリスクスコアと比べてAFHCHDC7リスクスコアは長期的な災害後CVD発症リスクの予測性能が低い結果が得られましたが(AUC:0.65 vs.0.73)、スコアの項目を一部修正した修正AFHCHDC7リスクスコア(年齢層別化、性別・喫煙追加)では、吹田CVDリスクスコアと同程度の予測性能となりました(AUC:0.74 vs.0.73)。修正されたAFHCHDC7リスクスコアは、血液検査や尿検査が不要で、簡単に活用できる、災害後の長期的CVD発症予測スコアとして有用であると考えます。今後更なる研究により、慎重にこのスコアの有用性を評価していく必要があります。
(佐藤 志帆)
連絡先
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