
- 伊藤 美郷(いとう・みさと)
- 福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座 助手

- 三村 耕作(みむら・こうさく)
- 福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座 准教授

- 河野 浩二(こうの・こうじ)
- 福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座 主任教授
- 研究グループ
- 【福島県立医科大学 消化管外科学講座】
伊藤美郷、三村耕作、中嶋正太郎、齋藤勝治、Aung Kyi Thar Min、岡山洋和、齋藤元伸、門馬智之、佐瀬善一郎、河野浩二
【福島県立医科大学 皮膚科学講座】
大塚幹夫、山本俊幸
概要
論文掲載雑誌「Cancer Immunology, Immunotherapy」(令和3年1月30日)
抗PD-1療法は、悪性黒色腫を含め様々な悪性腫瘍に対して有効であるが、その奏効率は約10~30%と限られている。また、抗PD-1療法を施行している過程で、同一症例に存在する多発性転移巣においても効果を認める病巣と認めない病巣が存在したり、当初は治療効果を認めていた病巣が再増悪する場合がある。抗PD-1療法への抵抗性に関与する免疫逃避機構は解明されておらず、同治療法の効果増強にはその解明が重要である。
本研究では、抗PD-1療法で制御できなかった消化管転移巣を切除した4例の悪性黒色腫症例を対象とした。それらの症例では、同治療法で消化管転移巣以外の多発性転移巣は制御されていた。消化管転移巣の切除標本を用いた免疫組織化学染色で、腫瘍微小環境における抗PD-1療法抵抗性のメカニズムについて検討したところ、腫瘍細胞におけるHLA class I発現の減弱、PD-L1(PD-1経路のリガンド)の発現消失、他の抑制性免疫チェックポイントリガンドの出現と発現増強(CD155, TIGIT経路のリガンド; CEACAM-1, TIM-3経路のリガンド)を認め、腫瘍浸潤CD8陽性T細胞数は減少していた。さらに、腫瘍細胞におけるHLA class I発現の減弱には、腫瘍微小環境で産生されたTGF-βの関与が示唆された。
本研究により、悪性黒色腫の消化管転移巣における抗PD-1療法抵抗性には、腫瘍細胞におけるHLA class I発現の減弱とPD-1経路以外の抑制性免疫チェックポイント経路のリガンドの発現が関与していることが示唆された。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 消化管外科学講座
電話:024-547-1111
FAX:024-547-1980
講座ホームページ:http://www.gi-t-surg.com/
メールアドレス:gi-tsurg@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角表記しています)