福島県立医科大学 研究成果情報

英国雑誌「BMC immunology」掲載(2020年6月15日)(2020-08-04)

JAK inhibitors impair GM-CSF-mediated signaling in innate immune cells

JAK阻害薬は自然免疫細胞でGM-CSFを介したシグナル伝達を阻害する

藤田 雄也 (ふじた ゆうや)
医学部 リウマチ膠原病内科学講座 助手
        
研究グループ
藤田雄也、松岡直紀、天目純平、古谷牧子、浅野智之、佐藤秀三、松本聖生、渡辺浩志、小鶴秀子、八橋弘、川上純、右田清志

概要

論文掲載雑誌:「BMC immunology」(2020年6月15日)


Janus kinases (JAK)阻害薬は、JAK/signal transduction activator of transcription (STAT)のシグナル伝達を阻害する低分子化合物です。臨床においては主に関節リウマチなどの疾患で使用されており、最近では複数のJAK阻害薬が臨床応用されるようになりました。JAKはJAK 1、JAK 2、JAK 3、TYK 2の4つのアイソフォームがあり、そのアイソフォームの組み合わせにより各種サイトカインの受容体が形成されます。各種JAK阻害薬はそれぞれ阻害するJAKアイソフォームが異なります。今回、我々はヒトTHP-1細胞とヒト好中球において、JAK2/JAK2のホモダイマーでシグナル伝達が行われるGranulocyte Macrophage colony-stimulating Factor (GM-CSF)のシグナルを、各種JAK阻害薬がどのように阻害するか検討しました。なお、主にJAK 1を阻害するUpadacitinib、JAK 1とJAK 2を阻害するBaricitinib、JAK 1とJAK 3を阻害するTofacitinibの3剤のJAK阻害薬を使用しました。

ヒトTHP-1細胞において、GM-CSFによる刺激 (20 ng/mL)で炎症性サイトカインであるIL-1βが産生されましたが、すべてのJAK阻害薬は濃度依存性にIL-1βの産生を抑制しました。JAK2/STAT5のリン酸化を、すべてのJAK阻害薬は濃度依存性に抑制しましたが、BaricitinibとUpadacitinibにおいてはより低濃度(20 nM)においても有意にリン酸化を抑制しました。

ヒト好中球においてもGM-CSFによる刺激 (20 ng/mL)で誘導されるIL-1βの産生をすべてのJAK阻害薬は濃度依存性に抑制しましたが、低濃度と中濃度(20nM. 100nM)ではBaricitinibがTofacitinibやUpadacitinibと比較して有意にIL-1βの産生を抑制しました。同様にGM-CSFによる刺激 (20 ng/mL)で誘導されるCaspase-1(p20)をすべてのJAK阻害薬は濃度依存性に抑制しました。これらの結果によりJAK2を介して行われるGM-CSFのシグナル伝達は薬剤間で違いがあることがわかりました。特にJAK2の選択性が高いBaricitinibにおいては、その他2剤のJAK阻害薬と比較して低濃度でもJAK2/STAT5のシグナル伝達を阻害して、炎症性サイトカインであるIL-1βの産生を強く抑制したものと考えられました。このようにJAK阻害薬のJAKアイソフォームへの選択性の違いが自然免疫細胞の免疫応答に影響を与え、臨床的な治療反応性の違いを生み出している可能性が示唆されました。


連絡先

 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 リウマチ膠原病内科学講座
 電話:大学代表024-547-1111(代)

 FAX:024-547-1172
 講座ホームページ:http://www.intmed2.fmu.ac.jp/rheumatology/

 メールアドレス:fujita31@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため、一部全角標記しています)